ベイビーズ・イン・ブラック

ベイビーズ・イン・ブラック：ビートルズの隠れた名曲

ビートルズの楽曲「ベイビーズ・イン・ブラック」は、1964年に発表されたアルバム『ビートルズ・フォー・セール』に収録されている楽曲です。同時期にアメリカで発売された『Beatles '65』にも収録されており、世界的に高い人気を誇るビートルズの中でも、特に隠れた名曲として知られています。

この曲は、ジョン・レノンとポール・マッカートニーの共作で、リードボーカルも2人で担当しています。6/8拍子のカントリー調の楽曲で、ジョージ・ハリソンの奏でる低音ギターのリフが印象的です。音楽評論家からは「従来のビートルズ作品よりも悲観的で、悲しみに暮れる少女への愛の哀歌」と評されており、その陰のあるメロディーと、切ない歌詞が多くのリスナーを魅了しています。

歌詞の内容については、ビートルズの元メンバー、スチュアート・サトクリフの婚約者であったアストリッド・キルヒャーと関連付けられるという説があります。サトクリフはハンブルク時代からの友人であり、1962年に早逝しているため、この説は楽曲に深い悲しみとノスタルジアを感じさせる一因となっています。

マッカートニー自身も、この曲について「ジョンと僕は少し影のある、ブルージーな曲を書きたかったんだ。完全に共作で、一緒に歌った。僕のハーモニーがジョンの歌う主旋律よりも前に出てしまうこともあったね。」と語っており、レノンもインタビューで共作であることを認めています。楽曲における主旋律の役割分担について、明確な線引きはされておらず、二人のボーカルが絶妙に絡み合うハーモニーが、この曲の魅力となっています。

レコーディングは1964年8月11日、EMIレコーディング・スタジオで行われました。14テイクものレコーディングを経て完成したこの曲は、「恋におちたら」と同様に、レノンとマッカートニーのボーカルを1本のマイクで録音するという手法が用いられています。最終ミックスは10月26日、ステレオミックスは11月4日に作成されました。

「ベイビーズ・イン・ブラック」は、ビートルズのライブでも定番曲として演奏され、1966年8月29日のサンフランシスコ公演まで演奏され続けました。マッカートニーはライブでこの曲を演奏する際、「そろそろちょっと違ったやつを」と曲名を告げずに演奏を始めることがあったそうです。「何を演奏するのか全然わかんないだろうな。クールじゃないか」と、観客の意外性を演出していたというエピソードも残されています。

この曲のライブ音源は、1996年発売のシングル『リアル・ラヴ』のB面、そして2016年発売の『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』にも収録されており、彼らのライブパフォーマンスを後世に残す貴重な資料となっています。

楽曲のクレジットは以下の通りです。

ジョン・レノン：ボーカル、アコースティックギター（リズムギター）
ポール・マッカートニー：ボーカル、ベースギター
ジョージ・ハリスン：リードギター
リンゴ・スター：ドラム

「ベイビーズ・イン・ブラック」は、数々のアーティストによってカバーされており、チャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズの『Beatle Country』(1966年)、フリンヴィル・トレインの『Flynnville Train』(2007年)などにも収録されています。

この曲は、ビートルズという名前に隠された、彼らの才能と音楽性の深みを感じさせてくれる、まさに隠れた名曲と言えるでしょう。そのブルージーなメロディーと切ない歌詞、そしてレノンとマッカートニーのハーモニーは、今なお多くのリスナーを魅了し続けています。

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