ベイリン

ベイリンの物語

ベイリン（Balin）はアーサー王伝説に登場する著名な騎士であり、特にアーサー王がイングランドを一つにまとめるために奮闘していた時代に活躍しました。彼はノーサンバランド出身で、物語の初めの方、特にマロリー版では第2巻で早々に命を落とすため、彼の活躍が記されている書籍は限られています。しかし、彼の生涯は後の聖杯探求において重要な位置を占めています。

ベイリンは様々な異名を持ち、「双剣の騎士」や「蛮人ベイリン」として知られています。彼の名は日本語書籍では「バリン」とも表記されることがあります。

呪いの剣

アーサー王が11人の王と戦っていた際、「この世で最も優れた騎士にしか抜けない剣」を持つ乙女が宮廷に現れました。騎士たちは次々と挑戦しましたが、誰一人としてその剣を抜くことはできませんでした。獄中から出たばかりのベイリン卿は、見事にその剣を抜くことに成功します。しかし、乙女はその剣には「自分の最も愛する者を殺す」という呪いがかけられていると告げ、剣を返すよう求めましたが、ベイリン卿はこれを拒否しました。

続いて、「湖の乙女」が登場し、剣を持ってきた乙女またはその剣を抜いた騎士の命を要求します。この乙女が自身の母を殺めた相手であることに気付いたベイリン卿は、この機会に湖の乙女を殺害してしまいます。これによってアーサー王の怒りを買い、彼は宮廷を追放されることになります。追放後、彼は自ら持っていた剣と新たに手に入れた剣を共に持ち歩くことから、「双剣の騎士」と呼ばれるようになりました。

追放後の戦い

アーサー王によってアイルランドの騎士・ランサー卿が刺客として送り込まれましたが、ベイリン卿はこれを難なく返り討ちにします。遅れてやってきたランサー卿の恋人は彼の死体を見て絶望し、自らの命を絶ってしまいます。これに対してベイリン卿も深い悲しみを抱きます。

その後、彼は弟のベイラン卿と合流し、アーサー王の許しを得るために、アーサーに敵対していた北ウェールズのリエンス王を倒すことを決意します。二人は僅か二騎で60人のリエンス王の兵を奇襲し、見事に彼を捕虜にします。この功績により、ベイリン卿はアーサー王から再び許しを受けることができました。

その後、アーサー王軍では魔法によって姿を消すガーロン卿という騎士が現れ、被害が出始めていました。ベイリン卿はアーサー軍に合流する前に、ガーロン卿を討つことに決め、彼を探し始めます。旅の途中で知り合った騎士がガーロン卿によって殺されるなどの悲劇も起きますが、ベイリン卿はペラム王の城を訪れ、ガーロン卿を見つけ出すことに成功します。

ペラム王の城では武器の携帯が禁じられていましたが、ベイリン卿は短剣を隠し持っており、ガーロン卿を暗殺します。しかし、この行動が城の主であるペラム王の怒りを買うことになります。短剣しか持たないベイリン卿は城内を逃げ回りつつ、ロンギヌスの槍を発見し、これによってペラム王を撃退しますが、その反動で周囲を破壊してしまい、自らも生き埋めとなります。また、この槍で傷つけられたペラム王はガラハッドが現れるまで癒えることのない傷を負うことになります。

不幸な結末

その後、不運続きのベイリン卿はアーサー王の元には戻れないと悟り、一人で旅を続ける決意をします。ある地方では「島を守る騎士」との決闘を強いられました。彼は決闘を承諾し、弟であるベイラン卿に会うことになりますが、この時彼は相手が弟であることに気が付きませんでした。一方、ベイラン卿も一見して兄ではないかと思ったものの、楯が異なるためそれを確信することができませんでした。

こうして兄弟は互いに戦い合い、致命傷を負ってようやく相手が自分の兄弟であることに気付くのです。最期を悟った二人は、同じ墓に埋葬されることを願いながら、その生涯を閉じました。ベイリン卿の物語は、騎士としての誇りや運命を背負いながらも悲劇的な結末を迎えることとなります。

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