ベッジ・パードン

『ベッジ・パードン』は、劇作家・演出家の三谷幸喜が手掛けた日本の演劇作品です。2011年6月6日から7月31日まで、世田谷パブリックシアターにて上演されました。

概要

当初、この作品はより深みのある内容で構想されていましたが、2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響を受け、三谷幸喜は脚本を大幅に改訂しました。当時上演していた『国民の映画』が非常に重いテーマを扱っていたこともあり、「こんな時だからこそ観客を笑わせたい」という思いが、コメディ要素を強くした恋愛劇へと舵を切らせました。この変更により、男女の出会いから別れまでを描く、三谷作品としては珍しいラブストーリーが誕生しました。

また、公演期間中に販売されたパンフレットの収益は、全額が東日本大震災の義援金として寄付されました。

この作品の出発点は、シス・カンパニーから野村萬斎に現代劇を依頼されたことでした。その際、三谷は野村萬斎がイギリス留学経験者であることから、同じくロンドンに留学していた夏目漱石を主人公にすることを思いつきました。劇中には、萬斎自身の留学経験が反映された場面もいくつか登場します。

浅野和之は、前年の舞台『叔母との旅』で10役を演じましたが、本作ではそれを上回る11役を演じ分けました。劇中では、夏目がロンドンで出会うほとんどの人物が同じ顔であるという設定になっています。

さらに、大泉洋が所属劇団TEAM NACSと劇団イナダ組以外の舞台公演に出演したのは、本作が初めてでした。

あらすじ

舞台は1900年のロンドン。フロッド・ロードの一角にあるブレット家の3階に、英語教師の夏目金之助が下宿するために引っ越してきます。そこで、彼は下宿先のブレット夫妻や、下の階に住む日本人のソータロ、そして使用人のベッジと出会います。

ある日、ベッジの弟であるグリムズビーが訪れ、金之助、ベッジ、ソータロに、ある計画を持ちかけます。この計画が物語の展開に大きく関わっていきます。

登場人物

夏目金之助（夏目漱石）
演 - 野村萬斎
ロンドンに留学中の英語教師。異国での生活に戸惑いながらも、ベッジとの交流を通じて心境に変化が現れていきます。

アニー・ペリン（ベッジ・パードン）
演 - 深津絵里
金之助の下宿先で働く使用人。イースト・エンド出身で訛りが強く、「I beg your pardon?」が「ベッジ・パードン」と聞こえたことが、ベッジという名前の由来です。また、彼女は「H」を発音しない独特の話し方をします。

畑中惣太郎（ソータロ）
演 - 大泉洋
金之助の下の階に住む日本人。英語が非常に堪能で、ネイティブスピーカーからも称賛されるほどです。日本語での会話を望む金之助に対し、英語で会話することで英語力を向上させようとします。

グリムズビー
演 - 浦井健治
ベッジの弟。ギャンブル好きで、様々な問題を引き起こします。

ハロルド・ブレット/サラ・ブレット
演 - 浅野和之
金之助の下宿先の主人夫婦。浅野和之が二役を演じます。

ケイト・スパロウ
演 - 浅野和之
サラ・ブレットの妹。恋愛に積極的で、金之助に近づこうとします。

ウィリアム・クレイグ
演 - 浅野和之
金之助に英文学を教える教師。シェイクスピアの研究をしています。ソータローからは陰で「ハゲ先生」と呼ばれています。

ハモンド牧師/セントクレア婦人
演 - 浅野和之
クレイグの知人。日本人に興味を持ち、金之助を見物しに来ます。その態度がソータローの怒りを買い、追い払われます。

ビクトリア女王
演 - 浅野和之
1901年に死去した女王です。物語にも登場します。

ブラットストリート警部
演 - 浅野和之
犯罪者「弾丸ロス」を追う警部です。

弾丸ロス
演 - 浅野和之
様々な悪事を企む犯罪者。グリムズビーに計画を持ちかけます。

ミスター・ジャック
演 - 浅野和之
ブレット家で飼われている犬。非常に口臭が強いという設定です。

モラン大佐
演 - 浅野和之
元軍人の老人です。

外部リンク

シス・カンパニー公演『ベッジ・パードン』

もう一度検索