ベッペ・グリッロ

ベッペ・グリッロ：コメディアンから政治活動家へ

ベッペ・グリッロ（本名：ジュゼッペ・ピエロ・グリッロ）は、1948年7月21日にイタリアのリグーリア州ジェノヴァで生まれました。コメディアン、俳優、ブロガー、そして政治活動家として、多岐にわたる分野で活躍しています。特に、2009年にジャンロベルト・カザレッジョと共に設立した「五つ星運動」は、イタリア政界に大きな影響を与えました。

コメディアンとしてのキャリア

会計士の道を志したグリッロでしたが、大学を卒業することなく、コメディアンとしての才能を開花させます。あるオーディションでの即興劇がきっかけとなり、テレビ司会者のピッポ・バウドに見出され、1970年代後半から数々のバラエティー番組に出演しました。1980年代には、アメリカやブラジルを訪れた経験を基にした番組で人気を博し、独自のユーモアセンスと社会風刺を交えたパフォーマンスで、多くの視聴者を魅了しました。

しかし、グリッロのパフォーマンスは次第に政治的な色合いを強めていきます。特に、1987年のテレビ番組で当時の首相を痛烈に批判したことがきっかけで、公共放送からの出入り禁止処分を受けました。この事件は、グリッロの政治的な姿勢を明確にする転換点となりました。

インターネットを通じた政治活動

1990年代以降、テレビ出演の機会が減る一方で、グリッロはインターネットの世界に活路を見出します。自身のブログを開設し、政治や社会問題に対する率直な意見を発信し始めました。彼のブログは瞬く間に人気を集め、世界有数のアクセス数を誇るブログへと成長しました。その影響力は、『ガーディアン』紙によって「世界で最も影響力のあるブロガーの一人」と評されるほどでした。

グリッロは、インターネットを直接民主主義を実現するための新たな可能性と捉え、積極的に活用しました。アントニオ・ディ・ピエトロ元インフラ相やダライ・ラマ14世など、各界の著名人からも支持を受け、イタリアにおけるデジタル・ユーロピアニズムの中心人物として、その存在感を高めていきました。

五つ星運動の創設と躍進

2009年、グリッロはジャンロベルト・カザレッジョと共に「五つ星運動」を設立しました。この運動は、インターネットを通じて誠実さや直接民主主義といった理念を広めることを目的としていました。その後、五つ星運動は政党へと発展し、2010年の地方選挙で初めて議席を獲得しました。2012年の地方選挙では、パルマ市長選挙で勝利するなど、着実に勢力を拡大していきました。

2013年の総選挙では、五つ星運動は25.5%の得票率を獲得し、下院選挙で第2位となりました。しかし、選挙制度の都合上、議席数は109にとどまりました。欧州議会では、「自由と直接民主主義のための欧州」という会派に所属しています。2014年には、イタリアのユーロ圏残留に関する国民投票を実施するために、400万人の署名を集めることを目指すと発表しました。

批判と論争

グリッロの活動は、常に賛否両論を巻き起こしてきました。環境保護を訴えながら高級車を所有していることや、過去の自動車事故、そして政治家に対する過激な発言などが批判の対象となりました。また、「デマゴーグ」や「ポピュリスト」といったレッテルを貼られることもありました。

しかし、グリッロはこれらの批判に対して、自らの信念を貫き、積極的に反論してきました。彼は、イタリア政治の腐敗や不正を告発し、国民の声を代弁する存在として、多くの支持を集めています。

ベッペ・グリッロは、コメディアンから政治活動家へと転身し、イタリア社会に大きな影響を与え続けています。彼の活動は、イタリア政治のあり方やインターネットを通じた政治参加の可能性について、私たちに多くの示唆を与えてくれます。

もう一度検索