ベティ・ジェームソン
米国の
プロゴルファー、ベティ・ジェームソンことエリザベス・メイ・ジェームソン(
1919年5月9日 -
2009年2月7日)は、女子ゴルフの歴史において数々の功績を残した先駆者です。1950年に発足した
全米女子プロゴルフ協会(LPGA)の創設メンバー13人の一人として、その歴史の幕開けを飾りました。キャリアを通じて、メジャー大会3勝を含む通算13回の優勝を果たし、
世界ゴルフ殿堂をはじめ、複数のゴルフ殿堂入りも果たしています。
アマチュア時代
ジェームソンは
オクラホマ州ノーマンに生を受けました。ゴルフとの出会いは11歳だったとされています。ニューヨークタイムズの訃報によると、11歳の時に母親から公営ゴルフ場の費用として1ドルを受け取ったことが、彼女がクラブを握る契機となったといいます。早くからその才能を開花させ、13歳だった1932年にはテキサスパブリンクスで優勝、さらに15歳で南部選手権を制しました。ダラスサンセット高校を1939年に卒業後もアマチュアとして傑出した成績を残し、1939年と翌1940年には全米女子アマチュア選手権で連覇を達成しました。女子ウェスタンアマチュアでも1940年、1942年と2度優勝しています。そして、最も特筆すべきは1942年の
女子ウェスタンオープンでの優勝です。当時メジャーに位置づけられていたこの大会で、彼女はアマチュアのままプロの強豪を抑えて勝利するという、前人未踏の偉業を成し遂げました。
プロ転向とLPGA創設
輝かしいアマチュアキャリアを経て、ジェームソンは1945年にプロへと転向しました。そして、1950年のLPGA設立において、他の12名の女性たちと共に中心的な役割を果たしました。これは、女子プロゴルフが安定して競技できる基盤を築く上で極めて重要な出来事であり、ジェームソンはその立役者の一人として女子ゴルフの発展に初期から尽力したのです。
プロでの成功と殿堂入り
プロとして、ジェームソンはメジャー3勝を含む通算13勝を挙げました。メジャータイトルは、アマチュア時代に優勝した1942年の
女子ウェスタンオープンに加え、1947年の
全米女子オープン、そして1954年の
女子ウェスタンオープンです。特に1947年の
全米女子オープンでは、
ノースカロライナ州で行われた大会で、72ホールでのスコアが295打という、女子選手として初めて300を切る画期的な記録を打ち立てて優勝しました。他にも、タンパオープン(1948年)、コーパスクリスティトーナメント(1952年)、世界選手権(1952年)、
女子ウェスタンオープン(1954年)、サラソタ・オープン(1955年)など、数多くの大会で勝利を重ねました。現役最後のLPGAツアー大会出場は1970年のバーダインズインビテーショナルでした。
ジェームソンの功績は、競技成績だけに留まりません。1967年にLPGAツアー殿堂が創設された際には、栄えある最初の殿堂入りメンバー6名の一人に選ばれました。また、彼女は1951年に女子ゴルフ殿堂入りを果たしており、この殿堂が後にLPGAツアー殿堂、そして
世界ゴルフ殿堂へと統合されたため、LPGAは彼女の
世界ゴルフ殿堂入りを1951年として公式に認めています。さらに1999年には女子スポーツ財団の殿堂入りも果たしており、LPGAのティーチングプロ・トップ50リストにも名を連ねるなど、多方面でその貢献が認められました。
その他の貢献と晩年
ジェームソンは、LPGAツアーで年間平均打数が最も少ない選手に贈られる賞を創設するというアイデアを提唱し、1952年には自身が深く尊敬していたアマチュアゴルファー、グレナ・コレット=ベアの名を冠したベアトロフィーを寄贈しました。これは、優れたスコアリング能力を持つ選手を称えるための重要な賞として現在も続いています。また、2004年には、
フロリダ州デルレイビーチ市が彼女の功績を称え、8月14日を「ベティージェームソンデー」と制定すると宣言しました。
晩年、ジェームソンは手根管症候群による手首の深刻な痛みに悩まされ、ゴルフを続けることが困難となり、チップショットやパッティングをわずかに楽しむ程度となりました。ゴルフから離れてからは、趣味として絵画を始め、中には友人に譲る作品もあったという温かいエピソードも残っています。しかし、ニューヨークタイムズの訃報が伝えるところによると、
フロリダ州ボイントンビーチの自宅で死去した際には、経済的に困窮していたとのことです。
ベティ・ジェームソンは、卓越したプレーヤーであり、LPGAの創設者の一人として、女子プロゴルフの確立と発展に計り知れない貢献をしました。その功績は、彼女が名を連ねる複数の殿堂や、ベアトロフィー、そして故郷に制定された記念日によって、今なお語り継がれています。