ベトザタの池

ベトザタの池：癒しの歴史を秘めた場所

ベトザタの池は、エルサレム旧市街、現在のムスリム地区に位置する古代の池です。新約聖書の『ヨハネによる福音書』5章に、イエス・キリストが病人を癒した場所として記述されており、キリスト教徒にとっては重要な聖地のひとつとされています。

聖書の記述と池の発見

『ヨハネによる福音書』には、次のような記述があります。

エルサレムには羊の門の傍らに、ヘブライ語で「ベトザタ」と呼ばれる池があり、そこには五つの回廊があった。この回廊には、病気の人、目の見えない人、足の不自由な人、体の麻痺した人などが、大勢横たわっていた。

この記述から、ベトザタの池は、病に苦しむ人々が集まる癒しの場所であったことが伺えます。しかし、長い間、その正確な場所は不明でした。

19世紀になり、ドイツ人考古学者コンラト・シックらの調査によって、現在の聖アンナ教会の敷地内で、古代の貯水池の遺跡が発見されました。この遺跡が、聖書の記述にあるベトザタの池であると考えられています。

ベトザタの池の歴史

考古学的な調査の結果、ベトザタの池は、紀元前8世紀頃に雨水を貯めるために作られたと考えられています。その後、紀元前2世紀頃に拡張され、より大きな貯水池となりました。

紀元前1世紀頃には、異教の癒しの神アスクレピオスを祀る神殿「アスクレペイオン」が建設され、ベトザタの池は癒しの泉として利用されるようになりました。人々は、この池の水に浸かることで病気が治ると信じていたようです。

イエス・キリストの時代には、この池はすでに癒しの場所として知られており、多くの病人が集まっていました。聖書の記述にあるように、イエスはここで38年間も病に苦しんでいた人を癒したとされています。

現代のベトザタの池

現在、ベトザタの池の遺跡は、聖アンナ教会の敷地内に保存されており、観光客が訪れることができます。遺跡からは、古代の貯水池や神殿の跡を見ることができ、当時の様子を偲ぶことができます。

ベトザタの池は、聖書の物語と古代の歴史が交差する場所であり、多くの人々にとって特別な意味を持つ場所です。エルサレムを訪れる際には、ぜひ足を運んで、その歴史と癒しの力を感じてみてください。

参考文献

『新共同訳聖書』
その他、ベトザタの池に関する考古学的資料

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