ベトナムから遠く離れて

映画「ベトナムから遠く離れて」

「ベトナムから遠く離れて」（原題：Loin du Vietnam）は、1967年に制作されたフランスのオムニバスドキュメンタリー映画であり、映画監督クリス・マルケルが製作を手掛けました。これに参加したのは、ジャン＝リュック・ゴダールやアラン・レネ、アニエス・ヴァルダといった著名な映画監督たちです。この作品は、1965年から続くベトナム戦争とそれに対する反戦運動をテーマにしており、当時の国際情勢を反映した重要な映像記録といえるでしょう。

背景

映画が制作された背景には、1965年に始まったアメリカによる北ベトナムへの空爆がありました。この空爆は「北爆」として知られ、アメリカ国内でも激しい反戦運動が巻き起こっていました。1966年、クリス・マルケルは仲間の監督たちに呼びかけ、南ベトナム民族解放戦線への連帯を表明する映像を制作することを決意しました。このプロジェクトは、世界中で進行中の戦争とその影響を映し出し、観客に強いメッセージを伝えようとするものでした。

構成と内容

本作は、エピローグと11章で構成されています。

• - 第一章「ハノイ爆撃」では、豊かな国の戦争と貧しい国の戦争の一方的な側面が描かれています。
• - 第二章「パレードはパレード」では、ベトナム戦争に対する支持者と反対者のデモが比較されています。
• - 第三章「ジョンソンの泣きベソ」では、アメリカの敗北を象徴するかのように描かれるジョンソン大統領の姿が印象的です。
• - 第四章「クロード・リデール」では、架空のテレビ報道を通じて不信の時代が語られます。
• - 第十章「アンとユエン」は、焼身自殺した反戦活動家ノーマン・モリソンの妻アンの回想を基にしています。彼女の言葉は、戦争の悲劇を強く感じさせる内容となっています。

撮影と制作

撮影には、ジャン・ボフティやドニ・クレルヴァルなどの著名な撮影監督が参加しました。編集もまた、エリック・プリューやジャン・ラヴェルらによって行われ、高い技術が結集されています。これにより、映画は視覚的にも聴覚的にも強い印象を与える作品となりました。

その後の影響

「ベトナムから遠く離れて」は、公開後すぐに多くの反響を呼びました。西ドイツやニューヨーク、ロンドンでの上映は、戦争の現実を伝える強力なメディアとしての役割を果たしました。クリス・マルケルのこの作品は、当時の反戦運動や社会運動に与えた影響を考慮に入れると、非常に重要な文化遺産といえるでしょう。

この映画を通じて、観客は戦争の現実を直視し、反戦の意識を高める契機となりました。映画製作に関わった監督たちは、ただの映像制作を超えて、メッセージを伝えるための強い意志を持って作品に取り組みました。近年においても、彼らの作品から影響を受けた多くの映像制作者が、それぞれの作品を通じて社会にメッセージを発信し続けています。

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