ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス

ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス（VSOE）

ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス（Venice Simplon-Orient-Express, 略称VSOE）は、ベルモンド社が運行するヨーロッパの豪華観光列車です。かつてのオリエント急行の黄金時代を彷彿とさせる、優雅な旅を提供しています。

歴史

オリエント急行は1883年に国際寝台車会社（ワゴン・リ）によって運行を開始され、東西ヨーロッパを結ぶ様々なルートで展開されました。しかし、第二次世界大戦後にはその豪華さは失われていきました。1976年、スイスの旅行代理店経営者アルバート・グラッツが、往年のオリエント急行を再現した観光列車（ノスタルジー・オリエント急行）を始めました。

1977年、アメリカの海運会社社長ジェームズ・シャーウッドが、オークションでワゴン・リ社の客車を落札。その後も客車を買い集め、修復し、1982年にベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレスとしてロンドン - ヴェネツィア間で運行を開始しました。

当初の列車名は「シンプロン・オリエント急行」となる予定でしたが、フランス国鉄の許可が得られず、「ベニス」を冠することになりました。

運行経路

2012年現在、通常の運行経路はロンドンおよびパリとヴェネツィアの間を結ぶ1泊2日の行程です。冬季は運休となります。

ブリティッシュ・プルマン編成：ロンドン（ヴィクトリア駅） - フォークストン
ユーロトンネルシャトル：フォークストン - カレー（カレー・ヴィル駅）
ワゴン・リ編成：カレー - パリ（東駅） - バーゼル - チューリッヒ - ブックス - アールベルクトンネル - インスブルック（中央駅） - ブレンナー峠 - ヴェローナ（ポルタ・ヌオヴァ駅） - ヴェネツィア（サンタ・ルチーア駅）

このほか、パリ - イスタンブール間など、様々な特別運行も行われています。

車両

VSOEの車両は、1920年代から30年代にかけて製造された、ワゴン・リ社や英国プルマン社の豪華客車が中心です。

ブリティッシュ・プルマン編成：イギリス国内で使用される編成で、キッチン・カーとパーラー・カーがあります。各車両には、Audrey、Cygnus、Gwenなど、それぞれ個性的な名前が付けられています。
* 大陸側編成：ワゴン・リ社の寝台車、プルマン車、食堂車などで構成されています。寝台車は、ワゴン・リ社で最も豪華なLx型が主に使用されています。

車内にはシャワーの設備はありません。

サービス

VSOEでは、乗務員が鉄道業界よりもホテル業界出身者で構成されており、きめ細やかなサービスを提供しています。

車内ではドレスコードが定められており、夕食時には男性はタキシード、女性はイブニングドレスなどが推奨されています。昼間はジャケットにネクタイ程度でも構いませんが、ジーンズは認められていません。

近年の動向

2020年のイギリスの欧州連合（EU）離脱（ブレグジット）の影響で、2024年3月にロンドン - パリ間の運行が一旦廃止される予定です。該当区間はユーロスターで代替輸送されます。

ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレスは、単なる移動手段ではなく、特別な時間と空間を提供する、唯一無二の観光列車です。豪華な内装、洗練されたサービス、そして美しい景色が、忘れられない思い出を創り出します。

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