ベネディクトゥス9世 (ローマ教皇)

ベネディクトゥス9世の生涯

ベネディクトゥス9世は、11世紀に3度にわたりローマ教皇に選出された特異な人物です。1012年頃にローマで生まれ、その名はテオフィラクトゥスといいました。トゥスクルム伯アルベリクス3世を父に持ち、ベネディクトゥス8世とヨハネス19世の甥にあたります。彼の教皇としての在位期間は、1032年10月から1044年9月、1045年4月から5月、そして1047年11月から1048年7月と、断続的でした。

若くして教皇へ

1032年、父アルベリクス3世の支援により、ベネディクトゥスはわずか18歳から20歳という若さで教皇に即位しました。資料によっては11歳や12歳だったとも伝えられており、その若さが物議を醸しました。

放蕩生活と教皇庁の腐敗

ベネディクトゥス9世は、その在位中に放蕩に明け暮れたと伝えられています。ペトルス・ダミアニは著書『ゴモラの書』で彼を「聖職者に扮した地獄からの悪魔」と非難し、教皇庁の腐敗や彼の同性愛行為を批判しました。また、ピアチェンツァ司教ベンノーも、彼の「嫌悪すべき姦淫と殺人」を糾弾しています。後年、教皇ウィクトル3世は彼の生涯を「嫌悪すべきもので、腐りきった、忌まわしいもの」と評しました。

退位と復位の繰り返し

1036年にはローマを追放されましたが、神聖ローマ皇帝コンラート2世の助けで短期間で復帰しました。1044年9月に再び追放されると、シルウェステル3世が教皇に選出されました。しかし、ベネディクトゥスは1045年4月にはローマに戻り、シルウェステル3世を廃位・破門して自ら復位しました。これが二度目の在位です。

教皇位の売買

しかし、その直後の5月には、結婚を望んだためか、教皇位を代父である司祭ヨハンネス・グラティアヌスに売却してしまいます。その売却益は650キログラム以上の金に相当するとされています。グラティアヌスはグレゴリウス6世として戴冠しましたが、ベネディクトゥスはすぐに教皇位を売却したことを後悔し、グレゴリウス6世を退位させようとしました。この混乱に乗じて、シルウェステル3世も教皇としての正当性を主張し、事態は混迷を深めました。

三人の教皇の鼎立

この異常な状況に対し、神聖ローマ皇帝ハインリヒ3世が調停に乗り出しました。1046年12月にストリで開催された教会会議で、ハインリヒ3世はベネディクトゥス9世とシルウェステル3世の聖職を剥奪、グレゴリウス6世には退位を勧告しました。そして、新たにドイツ人司教スイドガーを教皇クレメンス2世として即位させました。

三度目の教皇位

クレメンス2世が1047年10月に死去すると、ベネディクトゥス9世は11月にはラテラン宮殿を占拠し、再び教皇に復位しました。これが3度目の在位です。しかし、翌1048年7月にはハインリヒ3世によって廃位され、ダマスス2世が新たに教皇となりました。

その後の人生

1049年、ベネディクトゥスはシモニアの罪で召喚されましたが、これを拒否したため破門されました。その後、グロッタフェッラータの修道院で静かな余生を送り、1065年頃に死去したとされています。しかし、1085年に死去したという説や、1055年12月か1056年1月に死去したという説も存在します。ベネディクトゥス9世は、その波乱に満ちた生涯を通じて、中世教会の腐敗と権力闘争を象徴する存在として歴史に名を刻んでいます。

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