ベビイ・ドール

映画『ベビイ・ドール』解説

『ベビイ・ドール』（Baby Doll）は、1956年に公開されたアメリカ映画。エリア・カザンが監督を務め、テネシー・ウィリアムズの戯曲『27台分の綿を積んだワゴン車』を原作としています。舞台はミシシッピ州。当時タブー視されていた「幼妻」をテーマに、人間の愛欲と退廃を描いた作品です。

概要

エリア・カザン監督は、過去に『欲望という名の電車』でもテネシー・ウィリアムズの作品を映画化しており、本作でもウィリアムズ自身が脚本に参加しています。主演は、当時25歳ながら10代の少女を見事に演じきったキャロル・ベイカー。彼女のあどけない美しさと、内に秘めた情熱が観客を魅了しました。また、本作はイーライ・ウォラックの映画デビュー作としても知られています。

日本では、2006年にDVD-BOXでの発売が予定されていましたが、実際には収録が見送られました。その後、長らくソフト化されていませんでしたが、2017年にようやくDVDが発売され、再び注目を集めました。

あらすじ

物語は、南部の片田舎にある古びた家に住む、中年男アーチイと幼妻ベビイドールの夫婦を中心に展開します。ベビイドールはまもなく20歳を迎え、誕生日を境に、名ばかりの夫婦関係から、アーチイの本当の妻となる約束をしていました。

しかし、近隣に新しい紡績工場ができたことで、アーチイの事業は経営難に陥ります。苛立ちを募らせるアーチイでしたが、ある夜、その工場の倉庫が火事で全焼。放火の噂が広まる中、ベビイドールは夫の関与を疑い始めます。

一方、火事で倉庫を失った工場主バケロは、アーチイに綿の仕上げを依頼します。アーチイが留守の間、バケロはベビイドールを誘惑し、関係を持ちます。そして、ベビイドールから火事の夜のアリバイを聞き出したバケロは、それをネタにアーチイを脅迫。怒ったアーチイは猟銃を持ち出しますが、保安官が駆けつけ、放火の容疑で逮捕されてしまうのでした。

スタッフ・キャスト

監督：エリア・カザン
原作・脚本：テネシー・ウィリアムズ
撮影：ボリス・カウフマン
音楽：ケニヨン・ホプキンス
キャスト
ベビイ・ドール：キャロル・ベイカー
アーチー：カール・マルデン
シルヴァ：イーライ・ウォラック

受賞

第29回アカデミー賞：主演女優賞、助演女優賞など4部門ノミネート
第14回ゴールデングローブ賞：監督賞受賞

テーマ

『ベビイ・ドール』は、幼妻をめぐる愛欲、南部の退廃、そして人間の欲望と欺瞞を描いた作品です。エリア・カザン監督は、これらのテーマを大胆かつ繊細に描き出し、観客に強い印象を与えました。キャロル・ベイカーの演技、イーライ・ウォラックのデビュー作としても見逃せない作品です。

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