ベルギー王立天文台

ベルギー王立天文台

ベルギー王立天文台は、ベルギーの首都ブリュッセルにある由緒ある天文台です。1826年にアドルフ・ケトレーの提言を受け、ネーデルラント連合王国のウィレム1世によってサン＝ジョス＝タン＝ノードに設立されました。1890年には現在のユックルに移転し、20世紀前半には当時世界最大級の口径100cmのツァイス反射望遠鏡が設置されました。現在では、様々な天文機器や地震計を所有し、多岐にわたる研究活動を行っています。

主な活動

ベルギー王立天文台は、以下の分野で研究活動を行っています。

基準系とジオダイナミクス: 地球の形状や運動、重力場などを精密に測定し、地球科学の発展に貢献しています。
天体観測と天体力学: 天体の位置や運動を観測し、その軌道や力学的な特性を研究しています。
天体物理学: 天体の物理的な性質や進化を研究し、宇宙の謎を解き明かすことを目指しています。
太陽物理学: 太陽の活動や構造を観測し、太陽現象のメカニズムを解明しています。

これらの研究活動に加え、小惑星1276 Uccliaと16908 Groeselenbergは、それぞれ天文台が位置するユックルとグロエセレンベルグの丘にちなんで命名されました。

沿革

1823年、アドルフ・ケトレーはブリュッセルに天文台を設置するよう政府に働きかけました。1826年にウィレム1世が天文台設立の詔書に署名し、1827年からサン＝ジョス＝タン＝ノードでの建設が始まりました。気象観測は早くから開始されましたが、天文機器の搬入は遅れました。1828年にケトレーが天文台の天文官に任命され、観測体制が整えられていきました。

ベルギー独立革命の際には、王立天文台周辺でも戦闘が起こりましたが、ケトレーは新政府でもその地位を維持し、1832年からは天文台に住み込んで観測を始めました。1834年に建物と観測機器が完成し、1839年にはベルギー王国初代国王レオポルド1世によって「ブリュッセル王立天文台」と命名されました。ケトレーの死後、1874年には息子のエルネストが天文台長を引き継ぎました。

1876年に台長に就任したジャン・シャルル・ウーゾーは、天文台のユックルへの移転と天文学部門の気象学部門からの分離を計画しました。政府の予算増額により、科学スタッフの増員と観測機器の更新が行われました。1882年には金星の太陽面通過観測のため、チリのサンチャゴとアメリカのサンアントニオに観測隊が派遣されました。1883年からユックルでの新天文台建設が始まりましたが、ウーゾーの辞任により移転は遅れ、1890年から1891年にかけて完成しました。移転後は「ベルギー王立天文台」と改称されました。

1900年に台長に就任したジョルジュ・ルコインテの指揮の下、1901年に地震学的調査が始まり、1906年には最初の気象観測気球が打ち上げられました。ベルギーはCarte du CielとAstrographic Catalogueに参加し、観測は1964年まで続けられました。1913年には気象部門が独立し、王立気象研究所となりました。第一次世界大戦後の1920年から1922年には、天文電報中央局が一時的に置かれ、ルコインテがその責任者を務めました。

1936年に台長に就任したウジェーヌ・デルポルトは、1941年にデュトワ・ネウイミン・デルポルト彗星を発見しました。この後、王立天文台ではアラン彗星、アラン・リゴー彗星、アラン・ローラン彗星と計4つの彗星が発見されています。

1981年からは、太陽黒点指数の世界的なデータセンターであるSIDC（Solar Influences Data Analysis Center）が置かれています。

王立天文台プラネタリウムは、ブリュッセルの北部地域ヘイゼル高原に位置しています。

アマチュア天文家としても知られたボードゥアン1世は王立天文台に強い関心を抱いており、彼の死後、天文台入口の外には彼を讃える像が設置されています。

参考文献

“Centenary of the Royal Observatory of Belgium”. The Observatory 58: 208-209. (1935). Bibcode: 1935Obs....58..208..

外部リンク

ベルギー王立天文台公式サイト（英語）

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