ベルリン襲撃 (1760年)

ベルリン襲撃：七年戦争下の首都占領

1760年10月、七年戦争のさなか、オーストリア軍とロシア軍がプロイセン王国の首都ベルリンを襲撃し、4日間にわたり占領しました。この事件は、当時のヨーロッパの勢力図と、フリードリヒ大王率いるプロイセンの苦境を浮き彫りにする出来事でした。

背景：プロイセンの危機と連合軍の思惑

1759年、プロイセン軍は一連の勝利を収めたものの、翌年にはリーグニッツの戦いで敗北し、シュレージエンへの進攻は停滞。フリードリヒ大王がシュレージエンに兵力を集中させたことが、逆にベルリンを危機に晒すことになります。フランスは、この状況に乗じてロシアにベルリン急襲を提案。かつて1757年にもオーストリア軍がベルリンを短期間占領したことがあり、連合軍は主力部隊による陽動作戦と並行して、ハインリヒ・フォン・トートレーベン少将率いる別働隊を北上させ、ベルリンを襲撃する計画を立てました。行軍速度を上げるため、コサック騎兵や軽騎兵が投入されました。

占領：奇襲の失敗と都市の陥落

10月5日、トートレーベンは5,600名の兵を率いてオーデル川を渡り、ベルリンへの奇襲を試みます。しかし、ベルリン守備隊の迎撃に遭い、奇襲は失敗。守備隊司令官ロッホウ中将は撤退を主張しましたが、市内療養中のザイトリッツ中将が2,000名の兵を率いてロシア軍を撃退しました。ベルリンの危機を知ったヴュルテンベルク公フリードリヒ・オイゲン中将は、スウェーデン軍へ向けていた部隊を反転。ザクセンからの援軍も到着し、守備兵力は18,000名に増強されます。しかし、ラシー伯率いるオーストリア軍が到着すると形勢は逆転。ポツダムとシャルロッテンブルクが占領され、プロイセン軍は市街を放棄し、シュパンダウ方面へ撤退を余儀なくされました。

10月9日、ベルリン市議会はロシア軍に降伏。ロシア軍は私有財産の保護と引き換えに400万ターラーを要求しましたが、商人ゴッツコウスキーの交渉により150万ターラーに減額されました。しかし、オーストリア軍はロシア軍以上に市内での報復行為に及びました。プロイセン軍によるザクセンやオーストリア占領地での振る舞いが伝えられていたためです。一方、ロシア軍は国際的な名声を意識し、比較的節度ある行動を心がけました。とは言え、一部地域では略奪が行われ、王宮の一部が放火されるなどの被害も発生。マスケット銃約18,000丁、大砲143門が押収され、過去の戦闘で奪われたオーストリアとロシアの軍旗が奪還され、約1,200名の捕虜が解放されました。

撤収：フリードリヒ大王の帰還と連合軍の撤退

フリードリヒ大王が救援に向かっているという情報が広まると、連合軍は主要な目的を達成したとして撤退を決意。10月12日にベルリンから撤退し、オーストリア軍はザクセンへ、ロシア軍はフランクフルト・アン・デア・オーダー近郊の主力部隊へ合流しました。ベルリンが放棄されたことを知ったフリードリヒ大王は、救援を中止し、シュレージエンとザクセンの事態に集中するため戦地へ戻りました。

影響：フリードリヒ大王の憤りとその後の展開

フリードリヒ大王は、ベルリンの防衛軍と市民の抵抗の弱さに憤慨しました。しかし、この襲撃は軍事的に決定的な影響を与えたわけではありませんでした。ベルリン占領の影響が残る中、プロイセン軍はトルガウの戦いに勝利します。その後、トートレーベンは間諜の罪で死刑を宣告されますが、エカチェリーナ2世の恩赦により救われました。1762年、ベルリンは再び占領の危機に瀕しますが、フリードリヒ大王はブランデンブルクの奇跡によって救われることになります。

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