ベンジャミン・スミス・バートン

ベンジャミン・スミス・バートン：アメリカ初期の博物学者と医師

ベンジャミン・スミス・バートン (1766年-1815年) は、アメリカ合衆国における初期の重要な博物学者、植物学者、そして医師の一人です。彼の多様な経歴と学問的貢献は、18世紀後半から19世紀初頭のアメリカにおける科学の発展に重要な足跡を残しました。

生い立ちと教育

バートンは、アイルランド出身の牧師である父親と、著名な天文学者デービッド・リッテンハウスの妹である母親との間に生まれました。幼少期はペンシルベニアで過ごし、ヨーク・アカデミーとフィラデルフィア・アカデミー（後のペンシルベニア大学）で教育を受けました。フィラデルフィア・アカデミーでは、後に著名な医師となるベンジャミン・ラッシュらのもとで医学を学びました。

叔父であるリッテンハウスが率いたペンシルベニア西部地域の調査への参加は、バートンの人生に大きな影響を与えました。この経験を通して、彼はアメリカ先住民の文化や生活様式に強い関心を抱くようになり、後の研究にも反映されることとなります。その後、エディンバラ大学で医学を学んだものの、経済的な理由と教授との意見の相違から学位を取得せずにフィラデルフィアに戻りました。

教授としてのキャリアと研究

フィラデルフィアに戻ったバートンは医師として開業を始め、後にフィラデルフィア医学校の研究員となりました。アダム・クーンの後を継いでフィラデルフィア・アカデミーの博物学と植物学の教授に就任し、同アカデミーと医学校が統合されてペンシルベニア大学となった後も教授職を務めました。アメリカ芸術科学アカデミーの会員にも選ばれ、その後、Materia Medica（本草学）の教授も兼任しました。

正式な博士号を取得するため、キールのChristian-Albrechts大学から医学博士号を取得しました。さらに、ベンジャミン・ラッシュの後を継いで、医学理論と臨床医学の教授も務めました。ペンシルベニア病院の医師としても長年勤務し、その間、アメリカ合衆国およびヨーロッパの多くの博物学者たちと積極的に協力して研究を行いました。

主要な著作と貢献

バートンは数多くの重要な著作を残しました。特に注目すべきは、アメリカ合衆国初の植物学教科書となった『基礎植物学』(Elements of botany または Outlines of the natural history of vegetables, 1803) です。この教科書は、ウィリアム・バートラムの図版など、多くの協力者による貢献によって完成しました。

彼は『フィラデルフィア医学雑誌』の編集にも携わり、アメリカ・リンネ協会の設立にも尽力しました（ただし、同協会は長くは続きませんでした）。植物学以外にも、解剖学、動物学、言語学、そしてアメリカ原住民の起源に関する研究など、幅広い分野で研究成果を発表しました。ヘビの催眠術に関する論文や、英語の語源とアメリカ先住民の言語との関連性を論じた論文なども著しています。また、古生物学に関する論文も残しており、その多様な研究対象は彼の知的好奇心の高さを示しています。

まとめ

ベンジャミン・スミス・バートンは、多才な博物学者、植物学者、そして医師として、アメリカ初期の科学発展に多大な貢献をしました。彼の業績は、植物学教科書の出版にとどまらず、医学、動物学、言語学、さらにはアメリカ原住民研究にまで及び、当時の学問界に大きな影響を与えました。彼の研究は、現在でもアメリカにおける初期科学史研究において重要な資料として参照されています。

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