ウィリアム・バートラム

ウィリアム・バートラム：アメリカの自然を描き、後世に語り継いだ博物学者

ウィリアム・バートラム (1739年4月20日-1823年7月22日) は、18世紀後半に活躍したアメリカ合衆国の博物学者です。彼は博物画家としての才能を持ち、アメリカ南部の自然を克明に記録し、後世の作家や科学者たちに大きな影響を与えました。現在ペンシルベニア州フィラデルフィアの一部となっているキング・エッシングに生まれ、著名な博物学者であったジョン・バートラムを父に持ちました。

幼少期から、父ジョンと共にキャッツキル山地などへの探検に同行し、そこで得られた貴重な標本を丹念に写生しました。この経験は、ウィリアムの博物画家としての才能を大きく開花させ、後に彼の探検記録を彩る数々の精緻な図譜を生み出す基礎となりました。また、父が収集した希少な植物を育てるバートラム・ガーデンの管理にも携わり、植物学への深い理解を培っていきました。

1773年から1777年にかけて、ウィリアムは単身でアメリカ南部の8つの植民地を探検しました。フロリダ、ジョージア、カロライナなどを精力的に調査し、その土地の植物や動物を詳細に記録、スケッチしました。この探検は、当時のアメリカにおいて類を見ない広範囲かつ綿密なものであり、アメリカ南部地域の自然誌に関する貴重な情報を後世に残すことになりました。この探検で得られた知見は、彼が後に発表する著作の基礎となりました。

1780年代には、フロリダ、ジョージア、カロライナ地方での調査を継続的に行い、アメリカ鳥類相に関する当時としては最も包括的な一覧表を作成しました。彼の綿密な観察眼と正確な記録は、後の鳥類学者たちにも大きな影響を与えたと考えられます。ウィリアムの探検と研究は、単なる記録にとどまらず、アメリカの自然に対する理解を深める上で極めて重要な役割を果たしました。

1791年、ウィリアムは長年の探検と研究の成果をまとめた『Travels through North and South Carolina, Georgia, East and West Florida, the Cherokee Country, etc.』を出版しました。この著作は、アメリカの自然史に関する重要な文献であると同時に、生き生きとした風景描写でも高く評価されています。その鮮やかな描写は、イギリスのロマン派詩人であるウィリアム・ワーズワースやサミュエル・テイラー・コールリッジといった文豪たちにも影響を与えたと言われています。

晩年は、多くの大学からの教授職の依頼や、ルイスとクラークによる探検隊への参加要請を辞退し、バートラム・ガーデンで過ごしました。1802年には、アメリカの最初の鳥類図鑑を製作したアレクサンダー・ウィルソンと出会い、鳥類学の基礎を教えました。ウィルソンの代表作である『アメリカの鳥類』には、バートラム父子によるバートラム・ガーデンに関する記述も見られます。

ウィリアム・バートラムは、単なる博物学者という枠を超え、アメリカ南部の自然を深く理解し、その魅力を世界に伝える役割を果たしました。彼の探検記録と著作は、現代においてもアメリカの自然史研究において重要な資料であり続けており、彼の功績は、タマゴケ属の一種にBartramia pomiformisという学名が与えられていることからも窺い知ることができます。彼の残した記録は、18世紀後半のアメリカの自然科学と文化を理解するための貴重な遺産となっています。

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