ベントレー・ブロワー

ベントレー・ブロワー：スーパーチャージャー搭載の伝説

ベントレー・ブロワーは、ベントレーが1929年から1931年にかけて生産した、高性能スポーツカーです。その心臓部には、4.5リットルの直列6気筒エンジンを搭載。最大の特徴は、アムハースト・ヴィリヤース製ルーツ式スーパーチャージャーを備えていた点です。このスーパーチャージャーはクランクシャフトの先端で駆動し、エンジンに強力な過給圧を与えました。

ブロワーの軽量化にも工夫が凝らされています。クランクケースにはマグネシウム合金を採用し、ピストン、コンロッド、オイルポンプ、クランクシャフト、シリンダーブロックなど、主要なエンジン部品は強化されています。初期生産の5台はワークス仕様で、ブースト圧を高めるために圧縮比が低く設定されていました。量産型では圧縮比が変更され、最高出力は175馬力から182馬力に達しました。

しかし、このスーパーチャージャーの採用は、同時に信頼性の課題をもたらしました。高い出力を求めた結果、エンジンは過酷な負担を強いられたのです。ブロワーの生産台数はわずか55台と、非常に稀少なモデルです。

ル・マン24時間レースでの活躍と苦闘

ブロワーは、その潜在能力の高さを証明するため、ル・マン24時間レースに参戦しました。1930年大会では2台のマシンがエントリー。特に、ヘンリー・バーキンとジャン・シャサーニュ組の9号車は、4周目に平均時速144.352kmという驚異的な速さを記録。コースレコードを樹立するなど、その圧倒的なパフォーマンスで注目を集めました。しかしながら、クランクシャフトのトラブルにより21周目でリタイヤを余儀なくされます。もう一台の8号車もピストンの破損によってリタイヤとなりました。

続く1932年と1933年のル・マン24時間レースにも参戦しましたが、いずれも事故や機械的なトラブルによってリタイヤに終わっています。1932年には事故によりドライバーのジャン・トレヴォーが負傷しましたが、ヘルメットを着用していたおかげで命に別状はありませんでした。1933年には、ルイ・ガスが運転中に横滑りを起こし、車軸を破損させてリタイヤしました。

まとめ：高性能と信頼性の狭間

ベントレー・ブロワーは、スーパーチャージャーという革新的な技術を採用することで、当時の最高峰の性能を実現した高性能スポーツカーでした。しかし、その高出力と信頼性のバランスは、常に開発者にとって大きな課題でありました。ル・マン24時間レースでの活躍と苦闘は、その高性能と脆さを象徴する出来事と言えるでしょう。わずかに55台しか生産されなかった希少性も相まって、ブロワーは自動車史に燦然と輝く伝説的なモデルとして語り継がれています。

参考文献

『ワールド・カー・ガイド27ロールス・ロイス&ベントレー』ネコ・パブリッシング ISBN 4-87366-166-8
ドミニク・パスカル著、日沖宗弘訳『ル・マンの英国車』ネコ・パブリッシング ISBN 4-87366-068-8

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