ベントレー・3½リットル

ベントレー3.5リットル：ロールスロイス傘下入り後初の傑作

ベントレー3.5リットルは、ベントレーがロールスロイスの傘下となった後、最初に世に送り出した乗用車として知られています。1933年から1936年という短い期間に製造されましたが、その高い性能と洗練されたデザインは、自動車史に大きな足跡を残しました。

本車の開発においては、ロールスロイス20/25HPがベースとして用いられました。しかし、単なる焼き直しではなく、ベントレー独自のチューニングが施されている点が重要です。スキナーズ・ユニオン製のツインキャブレターの採用や、シャシーの改良によって、ベースとなった車両を凌駕する高いパフォーマンスを実現しています。シャシーは低く短く設計され、よりスポーティな走行性能を目指した設計思想が見て取れます。

心臓部であるエンジンは、水冷直列6気筒。その排気量は3,664cc(内径φ82.5mm×行程114.3mm)に及びます。最高出力は公式には公表されていませんでしたが、最高速度はロールスロイス20/25HPを大きく上回る148.4km/hを記録。これは当時としては驚異的な数値であり、ベントレーの技術力の高さを示すものです。トランスミッションは4速マニュアルで、ホイールベースは3200.4mm(126インチ)でした。

3.5リットルは、ロールスロイス20/25HPが25/30HPへと発展したことに伴い、製造中止となりました。わずか3年間の生産期間でしたが、合計1,177台が製造されました。生産終了後、後継車種として排気量を拡大した4¼リットルが登場することになります。

ベントレー3.5リットルは、ロールスロイス傘下入り後のベントレーの新たな方向性を示す象徴的なモデルと言えるでしょう。洗練されたデザイン、高い走行性能、そして歴史的な背景など、多くの魅力を併せ持った一台です。その存在は、現代の自動車にも影響を与え続けており、クラシックカー愛好家から絶大な人気を誇っています。

まとめ

ベントレー3.5リットルは、ロールスロイス20/25HPをベースにしながらも、ベントレー独自の技術とデザインによって、当時としては最高峰の性能と洗練されたスタイルを両立させたモデルでした。短い生産期間にもかかわらず、その存在感は大きく、後のベントレーの歴史に大きな影響を与えたと言えるでしょう。その高性能とエレガンスは、今日もなお多くのコレクターを魅了し続けています。 生産台数が限られていることも、希少価値を高めている一因でしょう。

参考文献

『ワールド・カー・ガイド27ロールス・ロイス&ベントレー』ネコ・パブリッシング ISBN 4-87366-166-8
高島鎮雄『世界の自動車-22 ロールス・ロイス ベントレー - 戦後』二玄社

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