ベーツヒラタカミキリ

ベーツヒラタカミキリ (Eurypoda batesi)

ベーツヒラタカミキリは、カミキリムシ科に属する昆虫で、学名は Eurypoda batesi であり、1894年に記載されました。この種は全体が赤褐色で、やや扁平な体形を特徴としています。特にノコギリカミキリなど、他のカミキリムシに似た外見を持っています。

特徴

このカミキリムシの特徴として、頭部には強い点刻が密に見られます。さらに、正中線にははっきりとした縦溝が存在し、大顎は顕著に強く、明確な隆起線を形成しています。複眼は大きく、頭部の多くを占めており、触角が雄では前肢の端にまで達しますが、雌の触角は短くなります。触角の柄節は短くて太く、特に第3節目は長く、後続の節の長さの約2倍に達します。また、先端側の節はわずかに扁平で、片側には浅い溝状のくぼみがあります。

前胸背は矩形に近く、両側の縁は緩やかに弧を描きながら後方に狭まります。特徴的な六角形の扁平な盤状部が背面中程に存在し、その基部近くに浅いくぼみがあります。前翅は扁平で、閉じているときには前胸背よりも幅広で、両側面がほぼ平行であるものの、後端近くでわずかに広がり、末端部は丸みを帯びています。また、前翅には弱い三本の脈が走り、強い点刻が密に見られます。歩脚は光沢を持ち、腿節は太く、脛節が扁平な形状です。

分布

このカミキリムシは、日本国内では主に本州の関東地方、中部地方以南に生息していますが、東北地方では記録がありません。また、四国や九州、周辺の島々、さらには琉球列島の沖縄島以北にも個体が見られます。国外では、朝鮮半島や中国南西部、タイ、ベトナム、ラオスにも分布するとされていますが、藤田他（2018）はこれらの地域の個体群が別種である可能性を指摘しています。地域的な変異は見られないとのことです。

個体数は多くないとされ、藤田他（2018）によれば珍品度は星4つと評価されています。和名が提起されたのは1937年で、それ以来この種の発見は少なく、非常に珍奇な種とされていました。しかし、近年ではその珍しさは薄れていると考えられています。

習性

幼虫はシイノキ類の生木の枯死部を好むものの、一般的な広葉樹も食べることがあります。成虫は夏になると活動を開始し、夜間には樹幹を歩き回り、日中は樹洞などに隠れていることが多いと考えられています。また、灯火にも良く飛来する習性があります。

保護の状況

環境省のレッドデータブックには含まれていないものの、府県別では16の府県で指定されています。特に福井県においては、この種が広葉樹の老木に依存しているため、その生育環境が減少傾向にあることが指摘されています。そのため、この環境の変化がもたらす危険に対する懸念が存在しています。

参考文献

• - 石井悌他編、『日本昆蟲圖鑑』、(1950)、北隆館
• - 藤田宏他、『月刊むし・昆虫大図鑑シリーズ10 日本産カミキリムシ大図鑑』、(2018)、有限会社むし社

もう一度検索