ペイトン・ラウス

フランシス・ペイトン・ラウス：発がん性ウイルスの発見者

フランシス・ペイトン・ラウス (1879年10月5日 - 1970年2月16日) は、アメリカ合衆国の病理学者にして医師です。彼の名は、発がん性ウイルスの発見によって医学史に刻まれました。1966年、87歳という高齢でノーベル生理学・医学賞を受賞した彼は、その受賞年齢が当時最年長であっただけでなく、受賞対象となった研究から実に55年もの歳月が経過していたという、異例の経歴の持ち主でもありました。

ボルチモアに生まれたラウスは、ジョンズ・ホプキンス大学とミシガン大学で学びました。その後、1909年にニューヨークのロックフェラー医学研究所（現在のロックフェラー大学）に職を得て、生涯にわたる研究生活を始めます。

ロックフェラー医学研究所での彼の研究は、癌の謎に挑むものでした。当時、癌の発生メカニズムはほとんど解明されていませんでしたが、ラウスは、鶏の腫瘍から抽出した物質を健康な鶏に接種することで、同じ腫瘍を発生させることに成功しました。この実験は、癌の原因がウイルスである可能性を示唆する、画期的な発見でした。

しかし、この発見は当初、学界から冷笑的な反応を招きました。彼の主張は、当時の科学界の常識を覆すものであり、容易に受け入れられるものではなかったのです。それでもラウスは、粘り強く研究を続け、自身の発見の正しさを証明するための努力を続けました。

彼の研究は、長い年月を経て、徐々にその重要性が認識されるようになりました。そして、55年もの歳月を経て、ついにその功績はノーベル賞という形で認められました。彼の受賞は、科学研究における忍耐と粘り強さを示す、極めて象徴的な出来事と言えるでしょう。

ラウスの功績は、発がん性ウイルスの発見にとどまりません。彼は、肝臓や胆嚢の生理学に関する研究にも貢献し、また、血液保存技術の開発にも携わり、最初の血液銀行の設立に貢献しました。彼の多岐にわたる研究は、医学の進歩に大きく寄与したのです。

ラウスの生涯は、科学の進歩における試行錯誤、そして粘り強い探究心と、その成果を世に認めてもらうまでの長年の努力を物語っています。彼の業績は、後世の研究者たちに大きな影響を与え、癌研究の進歩に多大な貢献を果たしました。87歳でのノーベル賞受賞という輝かしい成果は、彼の献身的な研究姿勢の証であり、医学史に燦然と輝く金字塔として永遠に記憶されるでしょう。

受賞歴

1955年 ジェシー・スティーヴンソン・コヴァレンコ・メダル
1958年 アルバート・ラスカー基礎医学研究賞、カール・ラントシュタイナー記念賞
1965年 アメリカ国家科学賞
1966年 パウル・エールリヒ&ルートヴィヒ・ダルムシュテッター賞、ノーベル生理学・医学賞

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