ペチカ

ペチカとは - ロシア式暖炉の魅力

ペチカ（печка）は、ロシアで生まれた暖炉兼オーブンです。ロシア語で「ストーブ」を意味する「ペーチ」の小型版であり、ロシア周辺国でも広く見られる暖房設備です。特に日本では、北海道を中心に「ロシア式暖炉」として知られています。

ペチカの歴史

ペチカの原型は17世紀の北欧で生まれました。石ではなくレンガで囲まれた暖炉が発明され、これがロシアで独自の進化を遂げ、ペチカとして確立されました。

ペチカの使用法

ペチカの使い方は、一般的な暖炉や薪ストーブとは大きく異なります。本格的な運用には、2〜3日以上の時間をかけて火を入れる必要があります。また、空気調整口と煙突ダンパーを完全に密閉することが重要です。

1. 初期準備: まず、煙突直下で少量の燃料を燃やし、上昇気流を作り出します。これにより、煙の通り道を確保します。
2. 燃料投入: 燃料には薪や石炭を使用します。火の温度を高く保つため、小さく割った薪を一度に大量にくべます。煙突ダンパーと空気調整口は全開にして燃やします。
3. 燃焼調整: 焚き口から炎が見えなくなったら、煙突ダンパーと空気調整口を半分閉じます。熾が暗赤色になったら、完全に閉じて熱を封じ込めます。密閉が不十分だと、熱が逃げるだけでなく、一酸化炭素中毒の危険性もあります。
4. 暖房: 着火後1時間で空気調整口と煙突ダンパーを閉じ、さらに1時間でペチカの表面が暖かくなるように焚くのが理想的です。

一度燃やすと、小型のものでも9時間程度、大型のものでは15時間も安定して放熱し、室内を暖めます。3立方メートルほどのペチカであれば、朝夕2回の燃焼で60〜70平方メートルの空間を暖めることができます。

ペチカの用途

ペチカは、暖房だけでなく、調理や風呂など、さまざまな用途に利用できます。

暖房

煙道を巡らせたレンガ製の壁面から放射される輻射熱で部屋を暖めます。熱効率が非常に高く、火力による熱量の90%以上を暖房に利用できるため、暖房期間が長い寒冷地で重宝されています。複数の部屋の間仕切りとして設置することで、2〜4部屋を同時に暖めることも可能です。

調理

オーブン、レンジ、パン焼き窯として利用できます。

風呂

内壁に水をかけて蒸発させ、蒸し風呂として利用できます。調理後の余熱を利用することも可能です。

日本への伝来と普及

ペチカは、北欧で生まれた暖房技術がロシアを経由し、開拓使によって1880年頃に北海道に持ち込まれました。満州拓殖公社が改良したものが北海道に普及したと言われています。導入当初は縦煙道型でしたが、現在北海道で見られるのは横煙道型が主流です。丸型ペチカは大正時代に普及しました。

炭鉱の閉山や石油ストーブ、暖房エアコン、セントラルヒーティングの普及とともに、暖房器具の選択肢が増えましたが、近年、ペチカのある暮らしが見直されています。

ペチカの用具としては、石炭用スコップや火かき棒などがあります。メンテナンスとしては、年に一度煙道の掃除が必要です。ただし、ペチカの特性上、煙突に煤がほとんど付かないため、掃除はほぼ不要です。

ペチカは単なる暖房器具としてだけでなく、その温かさや多機能性から、人々の生活に深く根ざした存在と言えるでしょう。

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