ペドロ・フローレス

ペドロ・フローレス

ペドロ・フローレス（Pedro Flores）は、1951年1月14日にメキシコで生まれた元プロボクサーである。WBA世界ライトフライ級のチャンピオンとして、その名をボクシング史に刻んだ。

彼のプロキャリアは、1973年11月7日に始まった。デビュー以来、彼は快進撃を続け、8連勝を飾るなど、その将来性を期待させた。しかし、迎えた9戦目、1975年7月19日に行われたメキシコ国内フライ級王座決定戦で、アルベルト・モラレスに12回判定で敗れ、キャリア初黒星を喫した。この敗戦から状況は好転せず、さらに3連敗を喫するなど、キャリアの序盤は必ずしも順風満帆とは言えなかった。1976年に久しぶりの勝利を収めるも、その後も不安定な戦績が続き、1978年にはリングに上がる機会が一度もなかった。

再び脚光を浴びたのは、1980年に入ってからである。同年6月13日、国内フライ級王者ホセ・ガジェゴスに挑戦し、12回判定勝ちを収め、メキシコ国内王座を獲得した。この勝利によって勢いを取り戻した彼は、さらに大きな舞台を目指すことになる。

そして1980年10月12日、ボクシング界の檜舞台へと上がる。場所は日本。対戦相手は、WBA世界ライトフライ級王座を12度も防衛していた絶対王者、具志堅用高だった。初の世界挑戦は15回フルラウンドを戦い抜いた末の判定負けに終わったものの、フローレスは終盤、スタミナ切れの具志堅をダウン寸前に追い詰めるなど、壮絶な戦いを演じた。この粘り強く勇敢なファイトは、ボクシングファンに強い印象を残し、敗れはしたものの高い評価を得ることになった。

この善戦が再戦の機運を高め、わずか5ヶ月後の1981年3月8日、再び具志堅用高との対決が実現する。前回の雪辱を期すフローレスは、チャンピオンを relentless に攻め立て、ついに12回TKO勝利を収めた。この劇的な勝利により、4年以上にわたりライトフライ級の頂点に君臨し続けた具志堅の長期政権に終止符が打たれた。フローレスはプロ23戦目にして、悲願の世界王座獲得を果たしたのである。

しかし、その栄光は長くは続かなかった。世界チャンピオンとしての初防衛戦は、同年7月18日に行われた。敵地である韓国で、ランキング1位の強敵、金煥珍と対戦したが、13回TKO負けを喫し、わずか4ヶ月で世界王座から陥落した。

王座を失った後、彼はさらに数試合を行った。1982年7月24日には、後にWBA世界ジュニアフライ級王者となる同国人の強豪、ルペ・マデラとノンタイトル戦で対戦したが、10回判定で敗れた。この試合が現役最後のリングとなり、彼はボクサーとしてのキャリアに終止符を打った。

引退後、ペドロ・フローレスは故郷メキシコでボクシングジムを開設し、後進の指導にあたった。1997年には、日本のテレビ番組で彼の近況が紹介され、長年のライバルであった具志堅用高と再会し、ジムのリング上で1ラウンドのスパーリングを行うなど、話題となった。

ペドロ・フローレスは、世界の頂点に立った期間は短かったものの、偉大な王者具志堅用高からタイトルを奪ったファイターとして、今もボクシングファンの記憶に残る存在である。

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