ペポーゾ

ペポーゾは、イタリアのトスカーナ地方に伝わる伝統的な牛肉料理です。その名前はイタリア語で「胡椒」を意味する「pepe」に由来し、その名の通り、大量の黒胡椒を使用するのが特徴です。ペポーゾには、ペポーゾ・アル・インプルネティーナ、ペポーゾ・アッラ・フォルナチーナといった別名もあります。

歴史

ペポーゾの起源は古く、ルネサンス期以前に遡ると言われています。トスカーナ地方のインプルネータという街が発祥の地であり、この地はテラコッタ（素焼きの陶器）の産地として知られています。ペポーゾは、元々インプルネータのレンガ職人たちが、レンガを焼く窯の隅で牛肉、赤ワイン、そして大量の胡椒を土鍋で煮込んでいた料理でした。「アッラ・フォルナチーナ」という別名は、「溶鉱炉風」「窯職人風」という意味を持ち、その起源を物語っています。

ブルネレスキとペポーゾ

ペポーゾは、フィレンツェのドゥオーモ（サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂）の建設と深く関わっています。ルネサンス期の建築家フィリッポ・ブルネレスキがドゥオーモのクーポラを建設する際、レンガ職人や建設作業員たちがこのペポーゾを食べていたと伝えられています。当時、牛肉のヒレやロースといった高価な部位は貴重であり、代わりに安価で硬い肉を美味しく食べるための工夫として、ペポーゾが生まれました。

特徴

ペポーゾは、牛肉を赤ワインと大量の黒胡椒で長時間煮込むため、非常に濃厚な味わいが特徴です。使用する牛肉は、一般的に肩肉やスネ肉など、煮込みに適した部位が選ばれます。また、黒胡椒の刺激的な風味が食欲をそそります。濃厚な味付けであるため、職人たちは大量のパンと一緒にペポーゾを食し、空腹を満たしていたと言われています。

現在のペポーゾ

現在では、ペポーゾはトスカーナ地方の郷土料理として、レストランや家庭で広く親しまれています。伝統的なレシピに加えて、様々なアレンジが加えられたペポーゾも存在します。 например, ローズマリーやニンニクなどの香草を加えて風味を豊かにしたり、トマトを加えて酸味を加えたりします。しかし、基本的な材料である牛肉、赤ワイン、そして大量の黒胡椒は、どのペポーゾにも共通して使用されています。

ペポーゾは、その歴史と風味豊かな味わいを通して、トスカーナ地方の文化と伝統を今に伝える料理と言えるでしょう。

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