ペラヤースラウ会議 (1654年)

ペレヤースラウ会議：歴史的転換点とその後の解釈

ペレヤースラウ会議は、1654年1月18日（ユリウス暦1月8日）にウクライナのペレヤースラウで開催された、コサック国家の命運を左右する重要な会議でした。コサックの将軍、ボフダーン・フメリニーツィキーが主導し、ポーランドとの戦いを有利に進めるため、ロシア・ツァーリ国の保護を一時的に受けることを決定しました。この決定は、同年3月の「三月条約」としてウクライナ・ロシア条約に編入され、ロシアによるウクライナへの介入、勢力拡大、そして最終的な併合へと繋がるきっかけとなりました。

会議の背景

1648年に始まったフメリニーツィキーの乱以来、コサックはポーランドとの戦いを支援してくれる同盟国を求めていました。クリミア・ハン国との同盟は裏切りによって破綻し、オスマン帝国の保護も正教会の反対や内政干渉により実現しませんでした。そこでフメリニーツィキーは、かねてより接触のあったロシア・ツァーリ国に目を向けます。

当初、ロシアはコサックからの支援要請を拒否していましたが、オスマン帝国がコサックを保護することを恐れ、1653年、ウクライナをロシアの保護国として受け入れることを約束します。こうして、1654年1月、ロシアからの使節団がペレヤースラウに到着し、会議が開催される運びとなりました。

会議の過程

1月17日、コサック政府とロシア使節団は、ロシアの保護と会議の手続きについて会談し、翌日の日程を決定。1月18日、フメリニーツィキーとコサック連隊長たちは、ロシアの保護を受け入れるかどうかを協議し、合意に至りました。しかし、全軍会議への参加者は限られ、平コサックや右岸ウクライナの連隊長らは参加できませんでした。

会議では、フメリニーツィキーがポーランドとの戦いの苦難とロシアからの支援の必要性を訴え、ツァーリの保護への賛同を求めました。コサックたちは賛成しましたが、ペレヤースラウ大聖堂でのツァーリへの誓約を巡り問題が発生します。コサック側は、ロシア側にもコサックの自治権を侵害しないことを誓約するよう求めましたが、ロシア側は拒否。コサック側は再協議の末、一方的にツァーリへの忠誠を誓いました。

会議の結果とその後

保護儀式の後、ロシアの使者はウクライナ各地でツァーリへの忠誠を誓わせましたが、一部の聖職者やコサックはこれを拒否しました。ロシアはウクライナ・ポーランド戦争に介入し、ロシア・ポーランド戦争が勃発。しかし、その後の領土問題やスウェーデンとの関係悪化などから、フメリニーツィキーはロシアからの離脱を決意し、他国との外交関係を模索しました。

しかし、国内の混乱とフメリニーツィキーの死により、コサック国家は内戦状態に陥り、最終的にはロシア帝国によって併合されることとなりました。

歴史的評価

ペレヤースラウ会議の評価は、歴史観によって大きく異なります。ロシア帝国時代やソ連時代には、「ロシアによるウクライナ併合」または「両国民の再結合」と解釈されていました。しかし、ウクライナでは、これは一時的な軍事同盟であり、「ポーランド隷属」から「ロシア隷属」への移行に過ぎなかったという見方が一般的です。

ウクライナの歴史家は、フメリニーツィキーがロシアとの同盟に反してスウェーデンと同盟を結んだことや、その後のコサック指導者たちがロシアとの戦いを続けたことを強調し、ペレヤースラウ会議がウクライナのロシアへの併合を意味するものではなかったと主張しています。

ペレヤースラウ会議は、ウクライナとロシアの関係において、複雑な歴史的背景を持つ重要な出来事であり、その解釈は現代にも影響を与え続けています。

関連項目

ウクライナとロシアの関係
ペラヤースラウ会議 (1659年)

もう一度検索