ペリリュー楽園のゲルニカ

『ペリリュー楽園のゲルニカ』

『ペリリュー楽園のゲルニカ』は、武田一義による日本の漫画作品です。太平洋戦争におけるペリリュー島の戦いをモチーフに、一人の兵士の目を通して戦争の悲惨さ、人間の尊厳を描き出しています。

作品概要

作者: 武田一義
原案協力: 平塚柾緒（太平洋戦争研究会）
掲載誌: 『ヤングアニマル』（白泉社）
連載期間: 2016年4号 - 2021年8号
スピンオフ: 『ペリリュー –外伝–』（2022年7号より短期集中連載）
受賞: 2017年日本漫画家協会賞優秀賞

あらすじ

舞台は南洋の楽園、ペリリュー島。漫画家を目指す22歳の田丸一等兵は、この島で日米の激しい地上戦に巻き込まれます。可愛らしい絵柄で描かれるキャラクターたちと、美しい自然とは裏腹に、戦場の現実、死体の描写など、目を背けたくなるような凄惨な光景が広がります。主人公の田丸は、戦場の緊張感を和らげる存在でありながら、読者は彼の目を通して戦争の不条理さ、人間の弱さ、そして希望を見出していきます。

作品の特徴

史実を基にしたフィクション: ペリリューの戦いの史実を参考にしながらも、物語はフィクションとして構成されています。
可愛らしい絵柄と残酷な描写の融合: 親しみやすい三頭身のキャラクターが、戦場の悲惨な現実に直面していく様子が描かれています。このギャップが、読者に深い印象を与えます。
発行部数30万部を超える異例の戦争漫画: 戦争漫画としては異例の発行部数を記録し、多くの読者から共感を得ています。

制作の背景

作者の武田一義は、2015年の天皇皇后両陛下（当時）によるペリリュー島慰霊訪問のニュースをきっかけに、この戦いに関心を持ちました。戦後70年の節目に、白泉社『ヤングアニマル』編集部が戦争をテーマにしたムックを企画し、武田に執筆依頼が舞い込みます。当初は読み切り作品として「ペリリュー玉砕のあと」を執筆しましたが、より深くペリリューの戦いを描きたいという思いから、連載へと発展しました。

受賞と評価

2017年、本作は日本漫画家協会賞優秀賞を受賞しました。かわいらしい筆致で戦争の恐ろしさを描き出した点が評価されています。また、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品にも選定され、「戦争の時代を生きた若者が何のために戦い、何のために生きたのかを問いかける作品」として高く評価されました。

原画展

2017年には、終戦72周年企画として「平和への思いを紡ぐ、ペリリュー島の記憶」と題した原画展が開催されました。ペリリューの戦いをテーマにしたドキュメンタリー映画『追憶』との共同企画として、熊本、茨城、東京の3都市で開催され、多くの来場者を集めました。

生還者の協力と拒絶

ペリリュー島の戦いから生還した兵士の中には、本作に協力的な者と、拒絶的な者がいました。土田喜代一は、作品を激励し、自身の体験を語りましたが、永井敬司は「戦争を体験していないあなたがなぜ戦争を描けるのか」と、協力を拒否しました。

アニメ映画化

連載終了後、アニメ映画化が発表され、2025年12月に劇場公開が予定されています。制作はシンエイ動画と冨嶽が担当します。

登場人物

物語には、個性豊かなキャラクターたちが登場します。

田丸均: 漫画家志望の主人公。戦場で様々な経験を通して成長していきます。
吉敷佳助: 訓練優秀な上等兵。心優しい性格で、戦いに疑問を感じています。
島田洋平: 田丸たちの小隊長。部下思いの頼れる上官です。
根本茂夫: 厳しい軍曹。軍人として模範的な人物です。
小杉伍長: 炊事係。飄々とした性格で、戦場を生き抜こうとします。

その他にも、多くの兵士や島民が登場し、物語を彩ります。