ペルジーノ

ペルジーノ：ルネサンスを彩ったウンブリアの巨匠

ペルジーノ（1448年頃 - 1523年）。ピエトロ・ヴァンヌッチという本名を持つ彼は、イタリア・ウンブリア地方を代表するルネサンス期の画家として知られています。「ペルジーノ」とは「ペルージャ人」を意味する愛称です。

ペルージャ近郊のチッタ・デッラ・ピエーヴェで生まれたペルジーノは、フィレンツェでアンドレア・デル・ヴェロッキオの工房に学び、油彩画の技術を習得しました。才能に恵まれた彼は、当時、非常に人気のある画家となり、多くの弟子や助手と共に制作活動を続けました。しかし、膨大な数の注文をこなすため、同じモチーフを繰り返し用いることとなり、作品クオリティのばらつきが生じることもありました。

彼の芸術人生における大きな転機の一つは、ボッティチェリやギルランダイオらと共に、バチカン・システィーナ礼拝堂の壁画装飾プロジェクトに参加したことでしょう。このプロジェクトでは、ペルジーノは中心的な役割を担い、若きラファエロの師としても知られています。イタリア全土から依頼が殺到し、「神のごとき画家」とまで賞賛された彼の輝かしい時代でした。

しかし、宗教改革の波は、多くの祭壇画の散逸という形で、彼の作品にも暗い影を落としました。現在、私たちが目にすることができる作品は、その一部に過ぎないのかもしれません。

ペルジーノの芸術：優美さと類型性

ペルジーノの絵画は、優美で上品な表現が特徴です。人物描写はやや感傷的で類型的な面も否めませんが、その洗練された技法と、繊細な色彩感覚は、見る者の心を魅了します。

特に、フィレンツェのパラティーナ美術館に所蔵されている『マグダラのマリア』は有名です。この作品は、宗教画であることを忘れさせるほど、甘美で官能的な女性像を描写しており、彼の芸術性の高さを示す好例と言えるでしょう。また、彼の描く人物は、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品と比較すると、輪郭線が明確であるという特徴も挙げられます。

代表作とその後

彼の代表作として挙げられるのは、ウンブリア国立絵画館に収蔵されている『カナの婚礼』です。その他にも多数の作品を残しており、その多くは、宗教画という枠を超えた、普遍的な美しさを私たちに伝えています。

宗教改革の影響により多くの作品が失われたという事実は、ペルジーノの芸術をより一層貴重な存在にしています。彼の作品は、ルネサンス期の芸術史において重要な位置を占め、現代においてもなお、多くの美術愛好家や研究者たちを魅了し続けています。彼の作品を通して、ルネサンス期の芸術の輝きと、その後の歴史的変遷を垣間見ることができるのです。

参考文献

* フイエ『イタリア美術』白水社〈文庫クセジュ〉、2012年。

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