ペンサコーラ占領 (1719年)

ペンサコーラ占領 (1719年)

概要

ペンサコーラ占領は、1718年から1720年にかけてヨーロッパの主要列強間で戦われた四国同盟戦争の北米戦線における重要な出来事の一つです。この戦いは、当時スペイン領フロリダの一部であった港湾都市ペンサコーラを巡り、フランスとスペインの間で繰り広げられました。1719年中に複数回にわたって支配者が交代するという、短期間での激しい攻防が特徴です。

戦いの経緯

フランスによる最初の占領

1719年5月、四国同盟戦争が遠く北米の植民地にも波及する中、ヌーベルフランス（現在のカナダおよびルイジアナ地方）の総督ジャン＝バティスト・ル・モワン・ド・ビアンヴィルの指揮下にあるフランス軍部隊が、スペイン領フロリダの主要な入植地であり戦略的拠点であったペンサコーラへの攻撃を開始しました。当時のペンサコーラは比較的少数のスペイン兵によって守られていましたが、フランス軍の迅速な作戦により、程なくして占領が完了しました。これにより、フランスはメキシコ湾岸における自国の勢力圏を一時的に拡大することに成功しました。

スペインによる奪還

フランスによるペンサコーラ占領の知らせを受けたスペイン当局は、この重要な拠点を奪還すべく、大規模な救援部隊を派遣しました。このスペインの援軍は、強力な陸上部隊と海上からの支援を伴っていました。1719年8月、この多数のスペイン軍がペンサコーラに到着すると、都市を防衛していた小規模なフランス駐留部隊は、圧倒的な兵力差の前に抗しきれず、やむなく降伏を選択しました。これにより、ペンサコーラは再びスペインの支配下に戻されました。

フランスによる再占領

しかし、ペンサコーラを巡る戦いはこれで終わりませんでした。スペインがペンサコーラを奪還して間もない1719年9月1日、今度はフランス本国から派遣された強力なフランス艦隊がメキシコ湾に到着しました。この艦隊の支援を受けたフランス軍は、再びペンサコーラへの攻撃を敢行しました。直前にスペインが奪還したばかりであったにもかかわらず、フランス艦隊の海上からの砲撃と上陸部隊による攻撃により、スペイン守備隊は再び劣勢に立たされました。数日間の攻防の末、スペイン軍は再びフランス軍に対して降伏し、ペンサコーラは三度フランスの支配下に入ることとなりました。この短期間での支配者の目まぐるしい交代は、ペンサコーラの戦略的な重要性と、両国がいかにこの地を重視していたかを物語っています。

戦争終結後の状況

四国同盟戦争は、ヨーロッパにおける外交交渉を経て1720年に終結しました。戦争の最終的な講和条約においては、原則として戦前の領土状態に戻す「原状回復」が取り決められました。この取り決めに従い、ペンサコーラも正式にスペインへ返還されることとなりました。しかしながら、条約による返還合意が成立した後も、実際にペンサコーラからフランス軍が完全に撤退し、スペインへの引き渡しが完了するまでには時間を要しました。フランスの駐留部隊は、最終的に1726年になってようやくペンサコーラから撤退したとされています。

このように、1719年のペンサコーラ占領は、四国同盟戦争における北米植民地での激しい主権争いを象徴する出来事であり、短期間に支配者が三度も交代するという特異な経緯をたどった後、最終的には戦前の状態であるスペイン領へと戻された歴史的事実です。

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