ペンタクォーク

ペンタクォーク：5つのクォークからなる謎の粒子

ペンタクォークとは、通常のバリオン（クォーク3個）や中間子（クォークと反クォークの対）とは異なり、クォーク4個と反クォーク1個で構成されていると考えられている特殊な重粒子です。長らくその存在は理論的な予測に留まっていましたが、2015年にCERN（欧州原子核研究機構）のLHCb実験によって、ついにその存在が確証されました。

ペンタクォーク発見の歴史

ペンタクォークの存在を示唆する最初の兆候は、2003年に大阪大学の中野貴志教授らのグループが、大型放射光施設SPring-8での実験で報告した「Θ+」という粒子でした。Θ+は、2つのアップクォーク、2つのダウンクォーク、そして1つの反ストレンジクォークで構成されているとされ、通常のバリオンではありえない量子数を持っていました。

この発見は大きな注目を集め、アメリカのトーマス・ジェファーソン国立加速器施設(Jefferson Lab)でも追試が行われましたが、当初肯定的な結果が得られたものの、後に統計量を大幅に増やした実験では確認されませんでした。そのため、ペンタクォークの存在については懐疑的な見方が強まっていました。

CERNによる存在の確認

しかし、2015年にCERNのLHCb実験グループが、陽子と鉛イオンの衝突実験において、2種類のペンタクォーク状態を発見したと発表しました。これらのペンタクォークは、チャームクォークとその反クォークを含む、より重い粒子であることが判明しました。LHCb実験は、非常に高い統計量でこれらのペンタクォークを観測し、その存在を揺るぎないものとしました。

ペンタクォーク研究の意義

ペンタクォークの発見は、素粒子物理学において重要な意味を持ちます。それは、クォークがどのように結合してハドロン（バリオンや中間子）を形成するかについての理解を深める上で、新たな視点を提供するからです。ペンタクォークの構造や性質を詳しく調べることで、クォーク間の強い相互作用のメカニズムや、ハドロンの内部構造に関するより深い知識が得られると期待されています。

ペンタクォークの研究はまだ始まったばかりであり、今後、その性質や生成機構についてさらに多くのことが明らかになるでしょう。それは、私たちが物質の根源的な構成要素とその相互作用について理解を深める上で、貴重な手がかりとなるはずです。

参考文献

T.Nakano et al., Physical Review Letters 91, 012002 (2003)

外部リンク
クォーク5個から出来ている新しい粒子（新バリオン）発見
Doubt is cast on pentaquarks（Natureのニュース、ペンタクォークへの疑問）
Pentaquark Debate Heats Up (2005/Apr/28) (Jefferson 研究所 (JLab) の報告。JLab の CLAS を使った実験の最新の解析結果からはペンタクォークは観測されなかった。)

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