ペースメーカー (陸上競技)

陸上競技におけるペースメーカーの役割

陸上競技、特に中長距離走やマラソンにおいて、ペースメーカーはレースのペースを維持し、他の選手を先導する重要な役割を担います。ペースメーカーは、レース序盤でのペースの乱れを防ぎ、好記録達成をサポートするだけでなく、風よけとしての役割も果たします。

ペースメーカーの起源と歴史

ペースメーカーの導入は、陸上競技の商業化に伴い、高記録への要求が高まった1980年代頃に海外で始まりました。当初、ペースメーカーは主催者と契約し、招待選手と同様に扱われました。現在では、特別なナンバーカードで選手と区別されますが、以前は区別がつかない場合もありました。

ペースメーカーと類似する役割として「ガードランナー」が存在します。ガードランナーは、スタート直後の混乱から有力選手を保護したり、有名選手に近づきすぎる参加者を牽制する役割を担います。

ペースメーカーには、メインの競技者と同等以上の走力が必要です。世界記録を狙うペースメイクでは、全行程を先導することは難しく、通常はレースの50%～80%程度を先導します。男女混合レースでは、男性ランナーが女性選手のサポートを行うこともあります。

オリンピックや世界選手権などの国際大会では、選手枠の関係から、ペースメーカーは基本的に使用されません。

日本におけるペースメーカーの受容

日本では、ペースメーカーの存在が一時タブー視されていた時期もありました。しかし、2002年に国際陸上競技連盟がペースメーカーを公認したことで、日本国内でもペースメーカーが使用されるようになりました。2003年の福岡国際マラソンでは、日本で初めてペースメーカーの使用が公表されました。

高橋尚子が世界記録を達成した際や、猫ひろしのペースメーカーを吉田香織が務めた例など、ペースメーカーは多くのレースで活躍しています。近年では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、男子選手が女子選手のペースメーカーを務める事例も見られるようになりました。

ペースメーカーの完走事例

ペースメーカーは、役割を終えた後、レースを完走することが許される場合があります。その場合、ペースメーカーが優勝することもあり、公式記録として認められます。以下に、ペースメーカーが優勝した主な事例を挙げます。

1994年ロサンゼルスマラソン：ポール・ピルキントン
1994年ランスマラソン：バンデルレイ・デ・リマ
2000年ベルリンマラソン：サイモン・ビウォット
2001年シカゴマラソン：ベン・キモンジュ
2017年バルセロナマラソン：ジョナ・チェスム

ペースメーカーに関するハプニング

ペースメーカーには、契約上の役割を逸脱してしまうハプニングも存在します。例えば、2004年の別府大分毎日マラソンでは、ペースメーカーが独走してしまい、コーチに止められるという出来事がありました。

また、2010年の福岡国際マラソンでは、ペースメーカーが急加速してしまい、係員に制止されるという事態が発生しました。

競馬におけるペースメーカー

陸上競技のペースメーカーと同様の役割として、競馬では「ラビット」が存在します。ラビットは、有力馬を上位進出させるためにペースを作る役割を担います。同一馬主のラビットと本命馬は一頭として扱われるため、ギャンブルとして成立します。日本の競馬でも、事実上のラビットは存在しますが、競馬法に抵触する可能性もあります。

まとめ

ペースメーカーは、陸上競技、特にマラソンにおいて重要な役割を果たします。レースのペースを管理し、選手の記録向上をサポートするだけでなく、時には自ら優勝することもあります。ペースメーカーの存在は、陸上競技の戦略や競技レベルに大きな影響を与えています。

関連情報

アシスト (自転車競技)
* 1マイル4分の壁 - ロジャー・バニスターの記録達成時のペースメーカーについて

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