ホセ・フィゲーレス・フェレール

ホセ・マリア・フィゲーレス・フェレール：コスタリカを革新した政治家

ホセ・マリア・イポリト・フィゲーレス・フェレール（José María Hipólito Figueres Ferrer、1906年9月25日 - 1990年6月8日）は、20世紀のコスタリカを代表する政治家の一人です。彼は第32代、34代、そして38代のコスタリカ大統領を務め、その政治手腕と革新的な政策によって、コスタリカ社会に大きな変革をもたらしました。

生い立ちと教育

1906年、フィゲーレスはアラフエラ州で生まれました。彼の父親はカタルーニャ出身の医師であり、母親は同じくカタルーニャから移住してきた教師でした。家庭内ではカタルーニャ語が用いられ、それが彼の母語となりました。1924年からはアメリカのマサチューセッツ工科大学（MIT）で工学を学び、帰国後はコスタリカ国内で農場経営や麻袋、麻ロープ、木製品の製造など、多岐にわたる事業を展開しました。また、農業に関する著作も発表するなど、幅広い知識と関心を持っていました。

政治キャリアと改革

フィゲーレスの政治キャリアは、1948年に暫定大統領に就任したことから本格的に始まりました。その後、彼は3期にわたり大統領を務め、その間に数々の重要な改革を実行しました。

軍隊の廃止

最も象徴的な政策の一つが、常備軍の廃止です。これにより、コスタリカは中米地域において稀有な非武装国家となりました。この決断は、国の資源を教育や医療などの社会福祉に重点的に投資することを可能にし、コスタリカの平和国家としてのアイデンティティを確立する上で重要な役割を果たしました。

銀行の国有化

フィゲーレスは銀行の国有化も推し進めました。これにより、政府は金融政策をより直接的にコントロールできるようになり、経済の安定化と発展に貢献しました。国有化された銀行は、中小企業への融資を拡大し、国内産業の育成を支援しました。

社会保障の拡充と民主主義の推進

その他にも、女性参政権の拡大、選挙権年齢の引き下げ（21歳から18歳へ）、黒人差別の撤廃、コスタリカ国立大学やコスタリカ工科大学の創設など、経済・内政にわたる抜本的な改革を行いました。安定的な長期政権を築きながらも、社会保障費の拡充を図り、他の左派政権のような独裁的な傾向に走ることなく、社会民主主義と高福祉を目指した彼の姿勢は、多くの人々から支持されました。

フィゲーレス主義とその影響

彼の思想は「フィゲーレス主義（Figuerismo）」と呼ばれ、社会民主主義的な価値観に基づいています。それは、社会正義、経済的平等、そして民主主義の尊重を重視するものであり、現代のコスタリカ社会にも深く根付いています。

現在でも、10000コロン紙幣に彼の肖像と軍隊の廃止を象徴する絵柄が描かれていることは、彼がコスタリカ国民に与えた影響の大きさを物語っています。ホセ・マリア・フィゲーレス・フェレールは、その革新的な政策と社会民主主義的な思想によって、コスタリカの歴史に名を刻んだ偉大な政治家として、今もなお多くの人々に尊敬されています。

もう一度検索