ホセ・ルイ・セルト

ホセ・ルイ・セルト（Josep Lluís Sert i López、1902年7月1日 - 1983年3月15日）は、スペインのカタルーニャ地方出身の著名な建築家であり、20世紀の建築界を代表する一人です。カタルーニャ語ではジュゼップ・リュイス・セルトと発音されます。

バルセロナで生まれたセルトは、バルセロナ建築学校（現在のカタルーニャ工科大学建築学部）で建築を学びました。卒業後、彼は建築家ル・コルビュジエのアトリエで無給の所員として働き、その影響を強く受けました。その後、1920年代には、トレス・クラヴェやリカルド・チュルカらとともに、現代建築の進歩を目指すスペインの芸術技術グループ「GATPAC」の設立に参加し、スペイン第二共和政期には学校建築に携わりました。

スペイン内戦後、セルトはアメリカ合衆国に移住し、ケンブリッジに居を構えました。彼はハーバード大学などで教鞭をとり、多くの学生を指導しました。1952年から1969年までイエール大学の学部長を務めたほか、ハーバード大学デザイン大学院の院長も歴任するなど、教育者としても大きな足跡を残しました。1981年には、アメリカ建築家協会（AIA）からゴールドメダルを授与され、その業績が讃えられました。

セルトの代表作には、以下のものが挙げられます。

セルト自邸 (1957年)：自身の住居として設計された、彼のデザイン哲学が色濃く反映された住宅です。
カーペンター視覚芸術センター：ル・コルビュジエのアトリエ時代に構想されたプロジェクトで、セルトが実施設計を担当しました。
ガラフの週末住宅：J.トレス・クラーヴェとの共同設計で、週末を過ごすための住宅です。
バルセロナの学校（1935年）：GATPACの一員として携わった学校建築です。
パリ万博スペイン館（1937年）：スペイン内戦中に建設された、政治的メッセージを込めた展示館です。
カタルーニャ現代美術館（1955年）：カタルーニャ地方の現代美術を展示する美術館です。
ハーバード大学ホリオーク・センター（1958年）：ハーバード大学の学生センターとして機能しています。
ピーボディー・テラス（1962年）：家族および独身の学生向けのアパートです。
ジョアン・ミロ財団ミロ美術館（1975年）：芸術家ジョアン・ミロの作品を展示する美術館です。
マーグ美術館：フランスのサン＝ポール＝ド・ヴァンスに位置する私立美術館です。
ハーバード大学サイエンスセンター（1970年）：ハーバード大学の科学研究施設です。

また、セルトは建築だけでなく、ダイニングチェアなどの家具のデザインも手がけました。彼のデザインは、モダニズムの思想に基づきながらも、地中海的な明るさと開放感を兼ね備えているのが特徴です。

セルトは、多くの建築家やデザイナーに影響を与えました。日本の建築家では、槇文彦がハーバード大学でセルトのスタジオで学んだ経験を持ち、坂倉準三もル・コルビュジエのアトリエ時代からの親交がありました。竹山実は、セルトやイサム・ノグチの事務所で勤務した経験があります。

セルトの研究に関する参考文献としては、以下のような書籍があります。

Josep Luis Sert / ホセ・ルイ・セルト 1953-1969 (2008年)
ホセ・M・ロヴィラほか　ホセ・ルイ・セルト完全作品集 (2005年)
ポール・ヘイヤー　ホセ・ルイ・セルト. 現代建築をひらく人びと－II a+u臨時増刊 20世紀のモダン・ハウス II 理想の実現
ホセ・ルイ・セルト作品集 プロセスアーキテクチュア PROCESS34号 (1982年)
シャルロット・ペリアン自伝 みすず書房
CASABELLA JAPAN ＋日本語版リーフレット
近代建築の証言/ジョン・ピーター TOTO出版 (2001年)
SD選書 18 現代建築を創る人々

これらの文献は、セルトの生涯と業績を理解する上で貴重な資料となります。

ホセ・ルイ・セルトは、その革新的なデザインと教育活動を通して、20世紀の建築界に大きな足跡を残しました。彼の作品は、今日においても多くの人々に影響を与え続けています。

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