ホッキョクギツネ

ホッキョクギツネ（北極狐）

ホッキョクギツネ（学名: Vulpes lagopus）は、ネコ目イヌ科に属するキツネの一種で、北極圏原産です。極寒の地に適応した特徴的な生態を持っています。

起源

2014年の研究により、ホッキョクギツネの起源はヒマラヤ-チベット高原にあることが示唆されました。360～508万年前の地層から発見された化石種 Vulpes qiuzhudingi が、ホッキョクギツネと共通する歯の特徴を持っていたことが根拠となっています。

形態

体長は46～68cm、尾長は26～42cmほど。極寒の環境で生き抜くために、以下のような特徴を備えています。

防寒性: 密生した体毛（下毛が7割を占める）、対向流熱交換系、体脂肪の蓄積により、-70℃の環境下でも生存可能です。丸みを帯びた体型、短い鼻口部と脚、小さい耳も体温の放散を抑えるのに役立っています。

食性

ホッキョクギツネは、ホッキョクグマの食べ残しや、自ら捕獲したレミング、ホッキョクウサギ、ライチョウ、ワモンアザラシの幼獣などを食べます。その他、爬虫類、両生類、鳥の卵、アザラシ、セイウチ、クジラ、トナカイの死骸など、見つけたものは何でも口にします。優れた嗅覚で、雪の中に埋もれた死肉も探し出すことができます。

ホッキョクグマの後を追って、食べ残しを漁ることもあります。しかし、自ら狩りも行い、雪に穴を掘ってレミングを待ち伏せたり、鳥類を捕獲したりします。ワモンアザラシの幼獣を捕食することもあります。

時には、同種間で食べ物を奪い合ったり、傷ついた個体を攻撃して食べることもあります。また、人間の死体も食べることもあり、ベーリング探検隊の遭難時には、病死した乗組員がホッキョクギツネに襲われるという痛ましい事例も報告されています。

分布と個体数

ホッキョクギツネは、北極圏全域（グリーンランド、ロシア、カナダ、アラスカ、スヴァールバル諸島など）および亜北極圏、アイスランド、スカンディナヴィア半島の高山地域に分布しています。

全体的な種の保護状況は良好ですが、スカンディナヴィア半島本土の個体群は絶滅の危機に瀕しています。ノルウェー、スウェーデン、フィンランドにおける成獣の推定総個体数はわずか120匹です。

ツンドラ地帯では、アカギツネとの競合関係にあります。近年、アカギツネの分布域が拡大したことにより、ホッキョクギツネの個体数が減少しています。アカギツネがホッキョクギツネの子供を捕食する例も報告されています。また、感染症による幼獣の死亡も個体数減少の要因となっています。

亜種

ホッキョクギツネには、以下の亜種が存在します。

ベーリング島ホッキョクギツネ (Vulpus lagopus beringensis)
アイスランドホッキョクギツネ (Vulpus lagopus fuliginosus)
グリーンランドホッキョクギツネ (Vulpus lagopus groenlandicus)
ホール島ホッキョクギツネ (Vulpus lagopus hallensis)
バロー岬ホッキョクギツネ (Vulpus lagopus innuitus)
プリビロフ諸島ホッキョクギツネ (Vulpus lagopus pribilofensis)
メードヌイ島ホッキョクギツネ (Vulpus lagopus semenovi)
シベリアホッキョクギツネ (Vulpus lagopus sibiricus)
スヴァールバル諸島ホッキョクギツネ (Vulpus lagopus spitzbergensis)
アンガヴァホッキョクギツネ (Vulpus lagopus ungava*)

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