ホッファ

映画『ホッファ』：伝説の労働者リーダーの生涯と、その影

1992年、アメリカで公開された映画『ホッファ』（原題：Hoffa）は、アメリカ労働運動史に大きな足跡を残したジミー・ホッファの生涯を描いた作品です。監督はダニー・デヴィート、主演はジャック・ニコルソンという豪華な顔ぶれで、公開当時大きな話題を呼びました。日本ではVHS版が『ホッファ JFKが最も恐れた男』というタイトルでリリースされたことでも知られています。

映画は、ホッファが全米トラック運転組合（IBT）委員長として、組合員のために闘い、労働運動を牽引していく姿を描いています。しかし、その成功の裏には、マフィアとの癒着や、権力闘争、そして暗殺疑惑など、数々の影が潜んでいました。

ジャック・ニコルソンは、カリスマ性と強引さ、そして人間味あふれるホッファを熱演。その演技は高く評価された一方で、否定的な意見も少なくありませんでした。結果、ゴールデングローブ賞とゴールデンラズベリー賞に同時にノミネートされるという異例の事態となりました。これは、ニコルソンの演技が非常に挑戦的で、観客の評価を大きく分けたことを示しています。

一方、ダニー・デヴィートが演じたボビー・チャロは、ホッファの実在の側近をモデルに創作された架空の人物です。デヴィートは監督も兼任しており、映画全体に緊張感とリズムを与えています。ニコルソンとデヴィートは、以前『カッコーの巣の上で』で共演しており、本作でもその抜群のコンビネーションを見せつけています。二人の友情は、映画制作現場にも良い影響を与えたと言われています。

『ホッファ』は、単なる人物伝ではなく、アメリカ社会における労働運動の複雑さや、権力闘争の残酷さを描いた社会派ドラマでもあります。ホッファを取り巻く環境、そして彼自身の葛藤や苦悩が丁寧に描かれ、観る者に深い衝撃と感動を与えます。

映画の製作には、数々の著名なスタッフが参加しています。脚本は、ハリウッドを代表する脚本家、デヴィッド・マメットが担当。彼の緻密な脚本は、映画にリアリティを与え、物語を盛り上げています。また、撮影監督スティーヴン・H・ブラムの美しい映像、作曲家デヴィッド・ニューマンの重厚な音楽も、映画の完成度を高めています。

アカデミー賞では撮影賞とメイクアップ賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞ではニコルソンが主演男優賞にノミネートされました。しかし、ゴールデンラズベリー賞では、ニコルソンとデヴィートがそれぞれ最低男優賞と最低監督賞にノミネートされたのは、先に述べたように賛否両論を巻き起こした証左と言えるでしょう。ベルリン国際映画祭でも金熊賞にノミネートされるなど、高い評価を受けながらも、物議を醸した作品であることは間違いありません。

『ホッファ』は、アメリカ労働運動史における重要な人物像と、その時代の社会状況を深く理解するための貴重な作品です。ジミー・ホッファの生涯に興味がある方、社会派ドラマを好む方、そしてジャック・ニコルソンとダニー・デヴィートの演技を見たい方におすすめです。この映画は、ホッファという人物像を多角的に捉え、観客に多くの示唆を与えてくれるでしょう。また、1978年のシルヴェスター・スタローン主演の『フィスト』や、2019年のロバート・デ・ニーロ主演の『アイリッシュマン』など、ホッファをモデルとした作品や、関連性の高い作品と比較検討することで、より深い理解を得ることができるでしょう。

もう一度検索