ホブ盤

ホブ盤：歯車の精密加工を支える工作機械

ホブ盤は、歯車製造において中心的な役割を担う工作機械です。回転する刃物（ホブ）を用いて、歯車の歯を精密に加工します。平歯車、はすば歯車、ウォーム歯車など、様々な種類の歯車を製造するために広く用いられています。

ホブ盤による歯切り加工

ホブ盤は、ホブと呼ばれる刃物をホブ軸に取り付け、歯車材とホブを同時に回転させることで歯切り加工を行います。この加工方法は「創成歯切り」と呼ばれ、歯車の歯形を正確に形成するのに適しています。ホブと歯車材の回転速度や送り速度を精密に制御することで、歯車の精度を高めることができます。さらに、ホブ盤には接線送り機構が備わっており、特にウォーム歯車の加工に有効です。ウォーム歯車専用のホブ盤は「ウォーム歯車ホブ盤」と呼ばれています。

ホブ盤で加工できる歯車の種類

ホブ盤は、標準的なインボリュート歯車の加工だけでなく、ホブの種類を変えることで、多様な歯車の加工が可能です。具体的には、以下の歯車の製造に利用できます。

平歯車: 並歯車とも呼ばれ、軸と平行な歯を持つ歯車です。
はすば歯車: 軸が交差する歯車です。動力伝達に広く使用されます。
ウォーム歯車: ウォームと組み合わせて使用される歯車です。大きな減速比を得ることができます。
スプロケット: チェーンと噛み合う歯車です。自転車やバイクの駆動系などに使用されます。
スプライン: 軸と部品を接続するための歯形状です。自動車のトランスミッションなどに使用されます。
インボリュート・セレーション: 特殊な歯形状を持つ歯車です。
タイミングプーリ: ベルト駆動を行う際に、タイミングを正確に制御するために使用される歯車です。

ホブ盤の歴史

ホブ盤は、1856年にクリスチャン・シーレがイギリスでホブ歯切りの基本構造に関する特許を申請したことに端を発します。その後、1887年にはアメリカでジョージ・B・グラントがホブ盤の実用化に成功しました。そして1897年、ヘルマン・ファウターが平歯車とへり歯車の両方を加工できる現在のホブ盤構造を確立しました。それ以来、ホブ盤は継続的に改良が加えられ、現代の精密機械産業を支える重要な工作機械へと発展しました。

ホブ盤の主な製造メーカー

ホブ盤は、高度な技術と精密な加工技術が必要なため、専門メーカーが製造しています。日本の主要メーカーとしては、以下が挙げられます。

カシフジ
浜井産業
ニデックマシンツール
清和鉄工
北井産業

これらのメーカーは、高精度なホブ盤を製造し、自動車、航空宇宙、産業機械など幅広い分野に供給しています。

まとめ

ホブ盤は、歯車製造に欠かせない精密工作機械です。その歴史は古く、19世紀半ばから現在に至るまで、継続的な改良が重ねられてきました。様々な種類の歯車を高精度に加工できるホブ盤は、現代の産業社会を支える重要な技術基盤となっています。

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