ホルンと管弦楽のための演奏会用小品

カミーユ・サン＝サーンスが作曲した《演奏会用小品》（Morceau de Concert, pour Cor）ヘ短調 作品94は、ホルン独奏と管弦楽のために書かれた協奏的な性格を持つ楽曲です。原曲のほか、作曲者自身によるホルンとピアノのための編曲版も存在しており、コンサートなどで頻繁に演奏される機会があります。

作品の背景と初演

この作品は、ホルンとピアノのための版、および管弦楽伴奏版ともに1887年に作曲されました。その後、1893年に出版されています。楽曲は、当時の著名なホルン奏者であったアンリ・ショシエ（Henri Chaussier）に献呈されました。初演は、1891年2月7日にパリのサル・プレイエルで開催された国民音楽協会の演奏会で行われ、献呈を受けたショシエが独奏を務めました。特筆すべきは、初演時のプログラムに、この作品がショシエが開発した特殊なホルン「コル・オムニトニーク（cor omnitonique）」のために書かれた旨が記されていたことです。

作品自体の規模は比較的コンパクトですが、その中にホルンという楽器が持つ豊かな表現力が最大限に盛り込まれています。このため、演奏家にとって重要なレパートリーの一つとして位置づけられており、同じくショシエに献呈された《ロマンス》ヘ長調 作品36やホ長調 作品67などと同様によく取り上げられます。

楽器編成

独奏ホルンに加えて、以下の編成の管弦楽によって演奏されます。

フルート 2
オーボエ 2
クラリネット 2
ファゴット 2
トロンボーン 2
ティンパニ
* 弦五部（第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

楽曲の構成

この《演奏会用小品》は単一楽章形式ですが、大きく三つの部分に分けて捉えることができます。全体の演奏時間はおよそ9分です。

第一部

アレグロ・モデラート、ヘ短調、8分の3拍子で開始されます。短い序奏に続いて、独奏ホルンが力強く決然とした性格を持つ主題を提示します。その後、管弦楽による間奏を挟み、提示された主題に基づく二つの変奏が続きます。これらの変奏は、次第に細かい音符を多用するような装飾的なパッセージが展開されるように書かれています。

第二部

第一部から切れ目なく、アダージョ、変イ長調、4分の4拍子へと移行します。ここは全体の緩徐部分にあたり、独奏ホルンが息の長い美しい旋律を歌い上げるロマンス楽想となっています。

第三部

再びテンポが上がり、アレグロ・ノン・トロッポ、ヘ短調からヘ長調へと移り、2分の2拍子となります。この部分では、冒頭の第一部で提示された主題に基づいた旋律が再び現れます。歌謡的な性格を持つ経過句を経て、独奏ホルンがその卓越した技巧を存分に披露する華やかなパッセージが繰り広げられ、楽曲全体が力強く締めくくられます。

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