ホレーシオ・グリーノウ

ホレーシオ・グリーノウは、1805年9月6日にボストンで生を受けました。彼の父は教育熱心な不動産取引業を営んでおり、弟のリチャード・グリーノウもまた彫刻家の道に進みました。幼い頃から美術に強い関心を示したグリーノウは、12歳になる頃には既に石膏像を手掛けるなど、彫塑や彫金の技術にも親しんでいました。

1821年から1825年にかけてハーバード大学で高等教育を受ける傍ら、彼はボストンに集まる芸術家たち、とりわけ画家のワシントン・オールストンとの交流を通じて、自らの芸術観を深めていきました。

彼のキャリアにとって転換点となったのは、1825年に始まったイタリアへの留学でした。ローマに滞在した彼は、同じく留学中であった画家のロバート・ウォルター・ウィアーと知り合います。この地でグリーノウは、古代ローマ彫刻の荘厳さや、ルネッサンス期の巨匠たちが残した不朽の作品群を精力的に学びました。また、当時ローマで活躍していたデンマークの新古典主義彫刻家、ベルテル・トルバルセンとの出会いも、彼の作風に大きな影響を与えたと考えられています。

ローマ滞在中にマラリアを患うという困難に見舞われましたが、回復後、彼はフィレンツェに自身の工房を構えました。1827年から1828年にかけての期間や、1842年の一時的な帰国を除き、グリーノウはそのキャリアの大部分をフィレンツェで過ごし、数多くの作品を生み出しました。

1951年、彼は自身の代表作の一つである「レスキュー」像のアメリカ合衆国議会議事堂への設置を監督するため、故国アメリカへと戻ります。しかし、帰国後まもなく熱病に倒れ、翌年の1852年12月18日、わずか47歳でボストンにて短い生涯を閉じました。

グリーノウの作品の中で最もよく知られているものの一つが、「レスキュー」像です。この作品は、アメリカ先住民の襲撃から家族を守る開拓民という、当時のフロンティア精神を反映した題材を取り上げています。1853年に合衆国議会議事堂の東正面に設置されましたが、時代が下るにつれて、その表現が先住民に対する偏見に基づいているとの批判が高まりました。このため、1958年には議事堂から撤去されることとなります。さらに、1976年には保管場所での移動作業中に損傷を受けるなど、その運命は波乱に富んだものでした。また、彼はアメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンの像なども手掛けています。

彼の息子であるホレーシオ・サルトンストール・グリーノウ（1845-1916）は、父とは異なる分野で才能を発揮しました。彼は生物学者となり、特に実体顕微鏡の発明者としてその名を知られています。

ホレーシオ・グリーノウは、限られた活動期間の中で、アメリカ彫刻がヨーロッパの新古典主義様式を取り入れつつ、独自の道を歩み始める重要な時期に貢献した先駆者と言えるでしょう。彼の作品は、当時のアメリカの文化や社会状況を映し出す鏡でもあります。

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