ホローポ

ホローポ：ベネズエラとコロンビアの魂を揺さぶる音楽

ホローポは、ベネズエラからコロンビアにかけて広がるリャノ地方で生まれた、情熱的な音楽とダンスの形態です。ワルツに似たリズムを持ちながらも、アフリカやヨーロッパの音楽的要素が融合した、独特の魅力を持っています。ベネズエラでは国民的な音楽として愛され、コロンビアでも伝統音楽の重要なレパートリーとなっています。

ホローポの語源と歴史

「ホローポ」という言葉は、元々スペイン語で「パーティ」を意味していました。1700年代、リャノ地方の労働者たちが、当時パーティやダンスを指す言葉として使われていた「ファンダンゴ」の代わりに、この「ホローポ」という言葉を使い始めたのが起源とされています。現在では、この音楽とダンスの形態そのものを指す言葉として定着しています。

ホローポのダンス

ホローポのダンスは、男女ペアで踊られます。まず、互いに強く抱き合いながらワルツを踊り、その後、向き合って床を這うように小さくステップを踏みます。最後に、互いの腕を取り、男性がリズムに合わせて足を踏み鳴らし、女性が這うようなステップを踏むのが特徴です。

ホローポの音楽

ホローポの演奏には、アルパ・ジャネーラ（中型のハープ）、弦楽器のバンドーラとクアトロ、そしてマラカスが用いられます。ヘミオラや4分の3拍子と8分の6拍子を交互に利用するなど、様々なポリリズム・パターンが用いられるのも特徴です。元々は、ベネズエラとコロンビアのジャノス（平野）に住む人々、通称「ジャネーロ」によって、歌と共に演奏されていました。そのため、ホローポの形態は「ムシカ・クリオージャ（クレオール音楽）」とも呼ばれています。

歌い手とハープ、またはバンドーラの奏者が主旋律を奏でる一方、クアトロは伴奏を弾き、特徴的なリズムと鋭い打楽器的な効果を生み出します。クアトロとバンドーラは、スペインのギターをルーツとする4弦楽器です。また、演奏に用いられる唯一の打楽器はマラカスです。ホローポという言葉は、音楽ジャンルやダンスの名称としてだけでなく、「演奏」そのものやイベント、または演奏の時を指す場合もあります。

現代では、ギターやフルート、クラリネット、ピアノなど、様々な楽器がホローポの演奏に加えられるようになり、完全な交響楽団がアレンジされたホローポを演奏することもあります。1950年代以降、ベネズエラの作曲家アルデマーロ・ロメロは、数多くのホローポの管弦楽的な編曲を手がけ、その楽曲は、伝統的な演奏だけでなく、世界中の観客を魅了しています。興味深いことに、管弦楽団がホローポを演奏する際には、クアトロが加えられることも少なくありません。

ホローポは、ヨーロッパ音楽、ベネズエラの土着の楽器であるマラカス、そしてアフリカから奴隷として連れてこられた人々の旋律という、3つの異なる文化の影響を受けています。この多様な要素の融合こそが、ホローポがベネズエラの人々を象徴する音楽と言われる所以です。

ホローポの種類

使用する楽器によって、ホローポにはいくつかの種類があります。

ホローポ・ジャネーロ (Joropo Llanero): ナイロン弦のハープ、クアトロ、マラカスを使用。
ホローポ・セントラル (Joropo Central): 鉄弦のハープ、マラカス、歌、クアトロを使用。
ホローポ・オリエンタル (Joropo Oriental): ギター、マンドリン、アコーディオンなど、様々な楽器を使用。

ホローポは、ベネズエラのアイデンティティを体現する音楽であり、その情熱的なリズムとメロディは、聴く人々の心を揺さぶります。

参考文献

Dydynski, Krzysztof (2004). Lonely Planet Venezuela (Lonely Planet Venezuela). ISBN 1-74104-197-X.

関連項目

リャノ
アルマ・ジャネーラ

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