ホワイト・ルーム (クリームの曲)

ホワイト・ルーム

「ホワイト・ルーム」（White Room）は、1960年代後半に一世を風靡したイギリスのロックトリオ、クリームによって生み出された楽曲です。ベーシスト兼ボーカリストのジャック・ブルースが作曲を手掛け、バンドのコラボレーターである詩人のピート・ブラウンが歌詞を紡ぎました。この曲は、彼らが1968年に発表した二枚組の大作アルバム『クリームの素晴らしき世界』（Wheels of Fire）の収録曲として初めて世に出ました。

制作とレコーディング

この楽曲のレコーディング作業は、1967年に行われたまだ正式タイトルが決まっていなかったクリームのサードアルバム制作セッション中に、ロンドンで開始されたと伝えられています。その後、1967年12月にはニューヨーク市のアトランティック・スタジオへと場所を移し、作業は継続されました。さらに翌1968年には、2月、4月、6月と三度にわたるセッションが同じくアトランティック・スタジオで行われ、ようやく楽曲は完成に至りました。

レコーディングには、ジャック・ブルースがリードボーカルとベースを担当し、エリック・クラプトンが印象的なギターパートをオーバーダビングで重ね、ジンジャー・ベイカーがドラムスとティンパニーでリズムを支えました。また、バンドのプロデューサーであったフェリックス・パパラルディもセッションに参加し、ヴィオラで楽曲に彩りを加えています。エリック・クラプトンは、ギターサウンドに独特の「トーキング・エフェクト」をもたらすためにワウペダルを効果的に使用しました。ドラマーのジンジャー・ベイカーは、楽曲の冒頭部分に通常の4分の4拍子とは異なる、特徴的な4分の5拍子（一般的には5/4拍子として知られる変拍子）の構成を取り入れたと述べています。

リリース形態と反響

アルバム『クリームの素晴らしき世界』のリリース後、1968年9月にはアメリカでシングルカットされました。この際、AMラジオでの放送を考慮して、楽曲は短く編集されたバージョンが使われましたが、アルバム志向の強かったFMラジオ局ではオリジナルのフルバージョンが放送されました。イギリスでのシングルリリースはやや遅れ、1969年1月に行われましたが、こちらはアルバムに収録されたものと同じフル尺のバージョンが採用されました。

楽曲は商業的にも成功を収め、また批評家からも高い評価を受けました。権威ある音楽雑誌であるローリング・ストーン誌が選定する「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500」では、376位にランクインするなど、その音楽的重要性は広く認知されています。

後世への影響と多様な解釈

「ホワイト・ルーム」は、クリームの解散後もメンバーや他のアーティストによって繰り返し演奏され、後世に影響を与え続けています。1972年にリリースされたライブアルバム『ライヴ・クリーム Vol.2』には、当時の迫力あるライブ演奏が収録されています。エリック・クラプトンは、1990年のロイヤル・アルバート・ホール公演シリーズや、1999年にシェリル・クロウとの共演コンサートなど、自身のキャリアを通じてこの曲を披露してきました。また、ジャック・ブルースも2001年発表のソロアルバム『シャドウズ・イン・ジ・エアー』でこの曲をリメイクしており、そこにはゲストとしてクラプトンが参加しています。

2005年には、再結成したクリームがロイヤル・アルバート・ホールで伝説的なライブを行い、その中でも「ホワイト・ルーム」は重要な楽曲として演奏されました。この時の模様は、ライブアルバムとしても公式にリリースされています。

音楽評論家のスティーヴン・トマス・アールワインは、オールミュージックでの楽曲レビューにおいて、「ホワイト・ルーム」が「極めて多様な、時には驚くような顔ぶれのアーティストたちによって頻繁にカバーされている」と指摘しています。ブロードウェイのスター、フュージョンギタリスト、カントリーバンド、そしてヘヴィメタルバンドに至るまで、そのカバーアーティストの幅広さは、この曲が持つ多面的な性質の証拠であると述べています。劇的な情景、複雑な音楽構成、そしてハードロックの持つエネルギーが、この一曲の中に等しく内包されており、様々なアーティストがそれぞれの解釈で特定の要素を強調する一方で、クリームのオリジナルバージョンはこれらすべてを一つの驚くべき完成品として提示していると評しています。

「ホワイト・ルーム」は、クリームというバンドの創造性と演奏能力が集約された楽曲であり、時代を超えて多くの音楽ファンに愛され続ける、ロック史における重要な一ページを飾る一曲と言えるでしょう。

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