ホングウシダ

ホングウシダについて

ホングウシダ（Osmolindsaea odorata）は、ホングウシダ科に属するシダ植物で、特に香りがあることで知られています。この植物は日本の特定の地域、主に本州の紀伊半島南部や八丈島、九州の一部で見られますが、環境によって生育場所は限られています。海外では台湾や南部中国、ヒマラヤ、アフリカの一部地域、さらにはマレー半島やソロモン諸島にも分布しています。

特徴

ホングウシダは小型で多年生の草本で、根茎の直径は通常1.5mmから2.5mm程度です。この植物の茎は短く横に這うことが多いですが、滑らかな岩の上では細長く伸びることもあります。鱗片は赤褐色で、長さは1-2mm、幅は0.25mmと小さいです。

葉柄は緑色から淡い茶色まで色づき、長さは3cmから20cmほどで、断面が円形に近く、葉身は単羽状に分かれます。葉の形は狭長楕円形から披針形に変化し、長さは7cmから30cm、幅は1.5cmから4.5cmです。葉の色は黄緑色で、葉質はやや硬い革のような質感があります。

羽片は左右不対称ながらも、おおむね長楕円形をしています。前側は直線的かやや中央が膨らんでおり、後ろ側は中心にくぼみがあります。葉脈は1回から2回分岐しており、互いに融合することはありません。特徴的なのは、羽片の後方の縁に沿って胞子嚢群が長くつながっており、葉の縁の切れ込みで区分されています。

また、このシダは葉を乾燥させると特有の香りを持ち、これは糖類と結びついている成分、クメリンが分離することに起因しています。

和名の由来

和名の「ホングウシダ」の「本宮」は、和歌山県の本宮山ではなく、愛知県の本宮山に由来します。牧野富太郎はこの植物が最初に発見された場所としてこの山を示し、しかしながらこの名の由来は諸説あり、林蘇絹はその起源について確定していないと述べています。興味深いことに、もともとは「カミガモシダ」という別種に与えられた名前が誤ってホングウシダに使われたとも言われています。

現在では「ホングウシダ」という名称が広く普及していますが、過去には「ニセホングウシダ」と呼ばれることもあったため、和名の扱いには混乱がありました。それでも、時間が経つにつれホングウシダが主に使用されるようになり、様々な文献で正式名として認知されています。

生育環境

このシダは川沿いや山林の岩の上に生え、特に湿気のある環境でよく見られます。分布域は日本国内に限らず、台湾や中国、さらにはアフリカ諸国にまで及び、特に高所に魅力を見出す植物です。岩場などでしか見られないことが多いため、観察する際は慎重に周囲を探す必要があります。

分類と近縁種

ホングウシダは以前はLindsaea属に分類されていましたが、近年のDNA解析により、別の属として再分類される可能性も示されています。従来、10以上の種が日本で認められていましたが、大多数は本土以南の南西諸島に分布しています。

サイゴクホングウシダはホングウシダの近縁種とされ、かつては亜種として扱われていたこともありますが、近年では独立した種とされています。このように、ホングウシダを含む属の分類は非常に複雑で、今後の研究成果によってはさらに更新されることでしょう。

利用と保護状況

ホングウシダは時に山野草として栽培されますが、その育成は難しいとされています。環境省のレッドデータブックでは特に指定はありませんが、各県での分布状況に基づき保護されていることが多いです。

まとめ

ホングウシダは日本特有の魅力的な植物の一つで、その美しい形状と独特の香りで観察者を惹きつけます。しかし、分布は限られており、育成も難しいため、自然の中でこの植物に出会った際は大切に観察したいものです。

もう一度検索