ホンダ・カレン

ホンダ・カレン：1970年代後半の原付バイク市場を彩った一台

1979年、日本の原付バイク市場は活況を呈していました。特に、ヤマハ発動機との激しい競争は「HY戦争」と呼ばれ、各社は革新的なモデルを投入しシェア獲得を目指していました。そんな中、本田技研工業（ホンダ）は、既存モデル「ロードパル」の上位機種として、新たな原付バイク「カレン」を送り出しました。

可憐な名前とデザイン

「カレン」という名前は、「可憐」に由来し、その名の通り、愛らしく、親しみやすいデザインが特徴でした。当時としては斬新なデザインが、多くのユーザーを魅了したのです。ボディカラーも豊富に用意され、ユーザーは自分の好みに合わせた一台を選ぶことができました。

ロードパルをベースにした実用性

カレンは、ロードパルと多くの部品を共有する姉妹車でした。低床バックボーン式フレーム、空冷単気筒2ストロークエンジン、CDI点火装置、無段変速機構といった基本的なメカニズムはロードパルと共通です。この設計思想により、信頼性の高いメカニズムと、扱いやすい操作性を両立させていました。初心者でも容易に運転できる点が、カレンの人気の理由の一つでした。また、前輪テレスコピック式サスペンションと後輪スイングアーム式サスペンションの採用により、走行時の快適性も確保されていました。

2つのモデルとマイナーチェンジ

カレンは、エンジン始動方式の違いにより、セルとキック併用モデルの「カレンNX50M」とキックモデルの「カレンNX50」の2種類がラインナップされました。発売当初の月産販売目標は15,000台と意欲的なものでした。

その後、1981年にはマイナーチェンジが行われ、「カレンNX50M」をベースに、大型レッグシールドを装備した「カレンS」が追加されました。同時に、月産販売目標は4,000台に調整されました。これは市場の動向や競合他社の状況を反映した結果と言えるでしょう。

日本国内市場に特化したモデル

カレンは、ロードパルシリーズとは異なり、日本国内市場のみに特化したモデルとして販売されました。輸出仕様は設定されていませんでした。これは、日本の道路事情やユーザーニーズに最適化されたモデルとして開発されたことを示唆しています。

大竹しのぶを起用した広告戦略

発売当初の広告には、人気女優の大竹しのぶが起用されました。これは、カレンのターゲット層に合わせた、効果的なマーケティング戦略の一環だったと言えるでしょう。大竹しのぶの持つ親しみやすさと、カレンの持つ可愛らしさが、絶妙なバランスで融合していました。

生産終了とその後

1983年、カレンはロードパルと共に生産を終了しました。しかし、その可愛らしいデザインと扱いやすさから、現在でも根強いファンを持つモデルとなっています。インターネット上には、カレンに関する情報や、オーナーによるカスタム事例などが数多く見られます。

カレンは、1970年代後半の日本の原付バイク市場において、ホンダの販売戦略の一端を担ったモデルでした。その存在は、当時の市場状況や、ホンダの技術力の高さ、そしてマーケティング戦略の巧みさを物語っています。 生産終了から時が経った現在でも、カレンは多くの人の記憶に残る、魅力的な一台として語り継がれています。

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