ホンダ・ジョルカブ

ホンダ・ジョルカブ：スーパーカブエンジン搭載スクーターの異色作

ホンダが1999年から2003年まで製造販売していたジョルカブは、同社のスクーター「ジョルノ」シリーズと、長年にわたって愛されるバイク「スーパーカブ」の要素を融合させた、個性的なモデルです。レトロなデザインと、一般的なスクーターとは異なるマニュアルトランスミッションが特徴で、多くのバイクファンを魅了しました。

ジョルカブの誕生背景

1997年、ホンダはオートバイエンジンを4ストローク化するという方針を打ち出しました。それまで49ccの2ストロークエンジンを搭載していた人気のスクーター「ジョルノ」も、この方針に従ってフルモデルチェンジされることになります。その結果生まれたのが、「ジョルノクレア」と、今回紹介する「ジョルカブ」です。

ジョルノクレアが無段変速機（CVT）の一般的なスクーターである一方、ジョルカブは「操る楽しさと乗る楽しさ」を追求した、全く異なるコンセプトで開発されました。その最大の特徴は、スーパーカブの空冷4ストロークSOHC単気筒エンジンと、自動遠心クラッチ付きの4段マニュアルトランスミッションの組み合わせです。

車両解説：ジョルノとスーパーカブの融合

ジョルカブの車名は、その名の通り「ジョルノ」の車体と「スーパーカブ」のエンジンの組み合わせからきています。ベースとなるジョルノやジョルノクレアと車体はほぼ共通ですが、スーパーカブエンジンの搭載に合わせて、多くの部分に独自の設計が施されています。

エンジン冷却: エンジン冷却風を前方から取り込み、シリンダーヘッドに導くため、レッグシールドは専用設計となっています。
フレーム: スーパーカブエンジンの搭載に対応するため、アンダーボーンフレームはベースモデルのジョルノに比べて80mm以上幅広くなっています。
フロアステップ: 左側にシーソー式ギアチェンジペダルを設置するため、専用設計のフロアステップが採用されています。
エンジン: スーパーカブ用のエンジンをベースにチューニングが施され、最高出力3.9ps/7,000rpm、最大トルク0.41kg-m/5,500rpmを実現しています。セルフ式とキック併用の始動方式、手動チョークなど、スーパーカブ譲りの特徴も残されています。
ドライブトレイン: スーパーカブと同じチェーン駆動方式を採用。そのため、リアサスペンションは一般的なスクーターとは異なり、スイングアーム式となっています。
ブレーキ: 前後とも機械式リーディングトレーリングブレーキですが、リアブレーキは左手操作です。
* メーターパネル: ニュートラルと4速走行状態を表示するランプが設置されています。

これらの設計により、ジョルカブは一般的なスクーターとは異なる、独特の操作感と走りを提供しました。マニュアルトランスミッションによるシフトチェンジの楽しさ、スーパーカブ譲りの力強いエンジン、そしてレトロなデザインが絶妙に調和した一台と言えるでしょう。

カラーバリエーションと販売

ジョルカブは、発売当初は「モンツァレッド」と「シャスタホワイト」の2色展開でした。その後、2001年には「ベガブラックメタリック」が追加されました。しかし、2003年には生産終了となり、希少なモデルとなっています。

まとめ：独特の魅力を持つ個性派スクーター

ジョルカブは、ホンダのスクーターとバイクの技術を融合させた、個性豊かなモデルでした。マニュアルトランスミッションによる独特の操作性、スーパーカブ譲りの頼もしいエンジン、そしてレトロなデザインは、多くのバイク愛好家にとって魅力的な要素だったと言えるでしょう。生産終了から時間が経過しているため、中古市場での取引が中心となっていますが、その希少性と独特の魅力から、根強い人気を誇るモデルです。 現在では、ホンダの2輪車アーカイブサイトなどで、その歴史を垣間見ることができます。

もう一度検索