ホンダ・ジョーカー

ホンダ ジョーカー：アメリカン風スクーターの個性派

ホンダが1996年から1999年にかけて製造・販売していたオートバイ、ジョーカーは、アメリカンスタイルのスクーターとして人気を博しました。リードシリーズと多くの共通部品を持つ姉妹車という位置付けで、50ccモデルと90ccモデルの2種類がラインナップされました。

デザインと特徴

ジョーカーの最大の特徴はそのスタイリングです。50cc、90ccクラスのスクーターとしては比較的大きな車体サイズ(全長1885mm×全幅935mm×全高1060mm)と、滑らかな曲線で構成されたボディ、ワイドなプルバックハンドルなど、アメリカンバイクを思わせるデザインが目を引きます。メッキパーツもふんだんに使用され、高級感も演出されています。

エンジンは、50ccモデルが空冷2ストローク単気筒AF42型、90ccモデルが空冷2ストローク単気筒HF05E型を搭載。どちらもVベルト式無段変速機で、スムーズな加速と走行を実現していました。サスペンションはフロントがボトムリンク式、リアがユニットスイング式を採用し、快適な乗り心地を提供しました。ブレーキはフロントに油圧式シングルディスク、リアに機械式リーディングトレーリングブレーキを搭載。タイヤサイズは前後とも100/90-10で統一されています。

シート下には、ハーフサイズのメットインスペースを装備。90ccモデルには、2人乗り用のダブルシートとタンデムステップが標準装備され、さらにクルーザーイメージを強調するシーシーバーもオプションとして用意されていました。

バリエーションと生産終了

ジョーカーは1996年7月に50ccモデルが、同年9月に90ccモデルが発売されました。発売当初はマックスシルバーメタリック、ブラック、キャンディメープルレッドの3色が用意されていましたが、1997年にはマイナーチェンジを行い、パールシャーウッドグリーンを追加、キャンディメープルレッドを廃止しています。また、1997年には限定車も発売されました。

しかし、1998年10月に施行された平成10年排出ガス規制に対応しなかったため、日本国内向けモデルは1999年8月に生産終了。欧州向け輸出仕様も2000年までに生産を終えました。

姉妹車と類似車

ジョーカーは、ホンダのリードシリーズをはじめ、キャビーナやブロードといったモデルと多くの部品を共有していました。一方、海外では、デザインがジョーカーと酷似しているとして話題になったモデルも存在します。アプリリア・モヒート(125cc、4ストローク)はその代表例です。さらに、中国のジネン社が製造する「アルテミス」や「オーロラ」といったスクーターも、ジョーカーのコピーと見なされています。これらのスクーターは、GY6型エンジンを搭載し、世界中に輸出されているとのことです。また、アメリカ合衆国のフライスクーターズ社が販売していたイルベロも、ジネン社のOEM供給によるジョーカーのコピーと見なされていました。

まとめ

ホンダ・ジョーカーは、アメリカンスタイルのデザインと扱いやすさで人気を博したスクーターでした。生産終了から時間が経ち、今では希少な存在となっていますが、その個性的なスタイルは、多くのライダーの記憶に刻まれていることでしょう。 排出ガス規制への対応がなされなかったことが生産終了の大きな理由となり、時代の流れを感じさせるモデルでもあります。 現在では、中古市場などで見かける機会があるかもしれません。 その独特なデザインと、かつてのホンダの技術力を感じ取ることができる貴重な一台と言えるでしょう。

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