ホンダ・ドリームCB72スーパースポーツ

ホンダ・ドリームCB72スーパースポーツ：伝説の250ccスポーツバイク

1960年代初頭、ホンダはモーターサイクルレース参戦と海外市場開拓を背景に、革新的なオートバイ、ドリームCB72スーパースポーツを開発しました。本モデルは、125ccクラスのベンリイCB92スーパースポーツと154ccのベンリイCB95スーパースポーツに続くCBシリーズの250ccモデルであり、北米市場ではHAWKの愛称で親しまれました。

開発の背景：レースと輸出戦略

1955年から開催された全日本オートバイ耐久ロードレースへの参戦が、CB72開発の原動力となりました。先行モデルであるドリームC71をベースにしたレース用マシンCB71の開発を経て、C71/C76の海外輸出における課題（プレスフレームとボトムリンクサスペンションが北米市場では時代遅れと見なされた）を克服するため、パイプフレームを採用した新型モデルの開発が急務となりました。

この結果、ドリームCR71の市販レーサー開発、そしてドリームC72をベースとしたCB72の開発へと繋がります。フランクフルトモーターショー（1960年9月）と東京モーターショー（1960年10月）で発表され、同年11月に発売されました。

車両解説：先進的な設計とスタイリング

CB72は、その名に相応しくスポーティな設計が特徴です。フラットなパイプハンドルと3段階調整式バックステップにより前傾姿勢が求められるライディングポジションが採用されました。フレームにはホンダ初となる鋼管パイプ製バックボーンタイプを採用し、サスペンションは前輪テレスコピック、後輪スイングアーム式。タイヤは前後18インチスポークホイールに、2.75(前)と3.00(後)サイズを装着。ブレーキは前後リーディングトレーディング式でした。

ボディカラーは、日本仕様では黒を基調にタンクにクロームメッキを施したスタイルが採用された一方、輸出仕様車では赤や青などのカラーバリエーションも存在しました。

エンジン：高性能2気筒エンジン

ドリームC72のエンジンをベースに、圧縮比を8.3から9.5へ向上させ、キャブレターをシングルからケーヒンPW22型2基へと変更するなど、大幅なチューニングが施されました。最高出力は24ps/9,000rpm、最大トルクは2.04kg-m/7,500rpmを達成。セルとキック併用式始動を採用し、キックスターターはバックステップとの干渉を避けるため前踏み式が採用されています。トランスミッションは4速、マフラーは左右2本出しです。

また、クランク位相角が180°のType1（高速型、最高速度155km/h）と360°のType2（低中速型、最高速度145km/h）の2種類のエンジンがラインナップされました。これらの判別はエンジン本体の点火ポイントカバーの刻印によって行えます。

計器類と改良履歴

ライトケース上部には、フルスケール12,000rpmのタコメーターと180km/h表示のスピードメーターが一体化して配置されました。積算距離計は、独特の縦型表示が採用されています。初期モデルではタコメーターとスピードメーターの回転方向が逆でしたが、製造途中で両方が時計回りとなるよう設計変更されました。

生産期間中、CB72は多くの細かな改良が施されました。代表的な変更点としては、1961年の前輪ブレーキ2リーディング化、1962年のフロントフェンダーの材質変更（アルミニウム→鉄）、メーター固定方法の変更などがあります。1966年にはウインカーが標準装備となり、1968年4月、後継モデルであるドリームCB250へのモデルチェンジに伴い生産が終了しました。

ドリームCB77スーパースポーツ：排気量アップモデル

CB72の姉妹車として、シリンダー内径を拡大し、排気量を305ccにアップしたCB77スーパースポーツが開発されました。最高出力は28.5ps/9,000rpm、最大トルクは2.06kg-m/7,500rpmに向上し、最高速度は160km/hに到達しました。北米市場ではSUPER HAWKとして販売され、CB72と同様に改良を重ねながら1968年4月にCB350へのモデルチェンジで生産終了しました。

派生車種：多様なバリエーション

CB72/CB77をベースにした派生モデルも数多く存在しました。ハンドルをアップタイプに変更したCBM72、CP77、白バイ仕様のCYP77、シングルキャブレターエンジンを搭載したCM72、そしてオンオフロード両用モデルであるCL72/CL77スクランブラーなど、多様なユーザーのニーズに対応したラインナップが展開されました。

まとめ：技術革新とレースへの貢献

ドリームCB72スーパースポーツは、ホンダの技術力の高さを示すだけでなく、日本のオートバイ産業の発展にも大きく貢献したモデルと言えます。その革新的な設計と高い性能は、多くのライダーを魅了し、現在でも多くのファンから支持されています。CB72は、単なるオートバイではなく、日本の高度経済成長期における技術開発と、モータースポーツ文化の隆盛を象徴する存在なのです。

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