ホンダ・バリエ

ホンダ・バリエ：時代の先端を行く、革新的なオートマチックバイク

1970年代、日本のバイク市場は活況を呈していました。特に、手軽で経済的な原付バイクは、爆発的な人気を博していました。1976年1月に発売されたホンダ・ロードパルはその代表例であり、年間25万台という驚異的な販売実績を記録しました。この成功を背景に、ホンダはさらなる市場開拓を目指し、新たなオートバイの開発に着手します。その結果誕生したのが、ホンダ・バリエです。

世界初Vベルト式無段変速機の搭載

バリエ最大の特徴は、世界で初めてVベルト式無段変速機を搭載した点にあります。従来のオートバイは、変速機による段付き変速が一般的でしたが、バリエはVベルトを用いることで、スムーズでシームレスな速度変化を実現しました。これは、当時のオートバイ業界において画期的な技術革新であり、ユーザーに快適な走行体験を提供しました。

幅広い用途に対応するデザインと機能性

車名の「バリエ」は、ラテン語で「多様に、いろいろに」を意味します。この名称からも分かる通り、バリエはレジャーからビジネスまで、幅広い用途に対応できることを目指して設計されました。低床バックボーンフレームを採用した車体は、全長1660mm、全幅630mm、全高975mmとコンパクトで扱いやすく、最小回転半径は1.7mと取り回しにも優れていました。

エンジンと性能

バリエに搭載されたエンジンは、強制空冷2ストローク単気筒ピストンリードバルブエンジンです。排気量は49cc、最高出力は3.6ps/6,500rpm、最大トルクは0.44kg-m/4,500rpmと、当時の原付バイクとしては十分なパワーを備えていました。潤滑方式は分離給油式で、燃料タンクの容量は3.8Lです。

走行性能と装備

サスペンションは、フロントがテレスコピック式、リアがスイングアーム式で、安定した走行性能を実現していました。ブレーキは前後とも機械式リーディングトレーリング、タイヤサイズは2.75x14でした。キックスターターのみのモデル（NF50）と、セルモーター付きモデル（NF50M）の2種類が用意され、NF50の車重は71kg、NF50Mは75kgでした。

価格と販売目標

1977年4月15日、バリエの価格はNF50が99,000円、NF50Mが109,000円と発表されました。販売目標は、輸出を含め月産15,000台とされました。しかし、1978年には実質的な後継モデルであるシャレットが登場し、バリエの生産は終了しました。

バリエの遺産

短期間の生産でしたが、バリエはホンダの技術力の高さを示すモデルとなりました。Vベルト式無段変速機という革新的な技術は、後のオートバイ開発にも大きな影響を与えました。また、多様なニーズに対応するコンセプトも、後のホンダの製品開発において重要な要素となっています。バリエは、その短い歴史の中で、多くのユーザーに快適な走行体験を提供し、ホンダの歴史に刻まれた一台と言えるでしょう。

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