セルモーター

セルモーターの概要

セルモーター（英: starter）は、自動車や発電機などの内燃機関を始動させるために使用される電動機です。日本では「セルモーター」という名称が一般的ですが、この言葉は和製[[英語]]で、過去には「スターチング・モーター」や「起動電動機」と表記されていたことがあります。セルモーターの「セル」は電池を指す「cell」から来ているとも言われています。

基本的な構造と機能

セルモーターはエンジン始動時に必要な回転力を提供します。内燃機関の吸気や圧縮行程は、エンジンが運転中に得る惰性力を利用できますが、始動時にはその惰性力がないため、外部からの力が必要です。セルモーターはこの外部の回転力を供給し、エンジンを始動させる重要な役割を担っています。

動作はイグニッションキーやエンジンスターターボタンを操作することで開始され、バッテリーなどから電力が供給されます。セルモーターは非常に強力なトルクを生成し、エンジンの圧縮行程で生じる回転抵抗を打破して必要な回転速度に達するよう働きます。

主要な構成要素には、直流電力で動作する電磁石界磁形整流子電動機が一般的に使用されており、直巻整流子電動機が主流です。セルモーターは、ギアにより減速され、エンジンの出力軸にトルクを伝えます。また、スタータークラッチが設けられ、エンジン運転中にセルモーターへ回転が伝達されない構造があります。

セルモーターの動作原理

自動車の場合、エンジンの出力軸にはリングギアが装備されており、セルモーターのピニオンギアが噛み合うことでエンジンを始動します。ピニオンはソレノイドアクチュエータによってスライドし、モーターのスイッチが入ったときのみリングギアに接続されます。

セルモーターには、回転に必要なトルクが比較的小さい自動車向けの直接伝達方式と、高トルクを必要とする大型車両向けのレブリダクション方式があります。レブリダクション方式では、モーターの回転をギアで減速し、トルクを増大させてピニオンに伝達します。この方式は特にトラックやディーゼルエンジン車で利用されます。

セルモーターの歴史

セルモーターの商業的な実用化は、1912年にキャデラックの市販車に搭載されたことから始まります。それ以前はエンジンのクランクシャフトを人力で回して始動していました。自動車業界での転機は、ヘンリー・リーランドが友人を事故で失ったことから、クランク棒に代わる方法の開発を命じたことに起因しています。この過程で、チャールズ・ケタリングが開発した電気式スターターが重要な役割を果たしました。

オートバイや他の機器への応用

オートバイにおいても、セルモーターの搭載が進みました。特に1910年に開発されたベンディックスギアは、セルモーターとの組み合わせで使われ、オートバイにおける小型化を可能にしました。小排気量車においては、依然としてキックスターターが使用されることがありますが、大排気量車ではセルモーターが一般的です。

緊急発進技術

緊急時には、スターターモーターを利用して車両を移動させる技術も存在します。この方法では、マニュアルトランスミッションの低ギアを選択し、クラッチを接続したままスタータースイッチを入れることで実現します。

このように、セルモーターは自動車とオートバイの始動に関する非常に重要な技術であり、その進化は自動車産業全体に影響を与えてきました。

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