ホンダ・ホーク

ホンダHAWKシリーズ：独自のスタイルと性能で一世を風靡した名車たちの物語

ホンダが1970年代後半から1980年代初頭にかけて製造・販売したHAWKシリーズは、400ccと250ccクラスのオートバイで、その個性的なデザインと高い性能で多くのライダーを魅了しました。本稿では、HAWKシリーズの歴史、モデルバリエーション、そして成功と衰退の要因を詳しく解説します。

開発背景：コスト削減と性能向上

1970年代前半、ホンダは400ccクラスのロードスポーツモデルとしてドリームCB400FOURを販売していましたが、1975年の自動二輪車運転免許制度改正により、排気量400cc以下のみを運転できる中型限定免許が設定されました。この影響で、CB400FOURは398ccモデルを開発する必要に迫られ、コスト高騰という問題が発生しました。

一方、CB360Tは設計の古さから陳腐化しつつありました。そこでホンダは、これら2車種を統合し、コストを抑えつつ性能を向上させた新型モデルの開発を決定。その結果生まれたのが、HAWKシリーズの礎となるCB400T HAWK-IIです。

CB400T HAWK-II：個性的なスタイルと高性能エンジン

CB400T HAWK-IIは、カフェレーサー風のCB400FOURとは異なる、独自のスタイルを採用しました。丸型燃料タンク、アップハンドル、厚手のシート、太いマフラーなど、アメリカンタイプともヨーロピアンタイプとも異なる独自の個性を放っていました。

エンジンは、吸気2バルブ、排気1バルブの3バルブ配置の空冷2気筒SOHCエンジン。超ショートストローク設計と電気進角式CDI点火により、最高出力40psを達成。これは、当時ライバル車であったヤマハRD400やスズキGT380を凌駕するものでした。

また、フレームはダイヤモンドフレームを採用。コスト削減のため、プラスチックパーツの多用や、コムスターホイールの採用などが行われましたが、重量物を車体中心部に集めた集中レイアウトにより、安定した操縦性を確保しました。

モデルバリエーション：400ccと250ccの展開

HAWKシリーズは、CB400T HAWK-IIをベースに、様々なモデルが派生しました。

400ccモデル:

CB400T HAWK-II: シリーズの基礎となったモデル。特徴的な丸型燃料タンクから「やかん」の愛称でも呼ばれていました。マイナーチェンジを経て、燃料タンク形状やリヤサスペンションの変更などが行われました。
CB400T ホンダマチック装備車 HAWK: ホンダマチックオートマチックトランスミッションを搭載したモデル。クラッチレバーが廃止され、エンジン特性も変更されていました。
CB400N HAWK III: ヨーロピアンテイストの外装デザインを取り入れたスーパースポーツモデル。セミフラットハンドル、バックステップ、6速ミッション、ダブルディスクブレーキなどが採用されました。
CB400D SUPER HAWK III: HAWK IIIの大幅マイナーチェンジモデル。ハンドルロック、メーター周り、ブレーキキャリパーなど、多くの部分が変更されました。デュアルピストンキャリパーやセミエアサスといった先進的な装備も採用されました。

250ccモデル:

CB250T HAWK: CB400T HAWK-IIの250cc版。エンジンは400ccモデルと共通の設計思想を受け継いでいました。
CB250N HAWK: CB400N HAWK IIIの250cc版。フロントタイヤ径やコムスターホイールの仕様が異なっていました。
* CB250NA SUPER HAWK: CB400D SUPER HAWK IIIの250cc版。車体外装部品を共通化しつつ、400ccモデルとは異なる仕様が採用されました。

成功と衰退：2気筒エンジンの限界

CB400T HAWK-IIは、同クラスのライバル車よりも高い性能で人気を博し、多くの派生モデルを生み出しました。しかし、1970年代後半以降、4気筒DOHCエンジン搭載モデルが台頭すると、販売実績は低下していきました。2気筒エンジンでは、高性能化に限界があったことが、衰退の要因の一つと考えられます。

250ccモデルも、400ccモデルとフレームを共用していたため、車重が重く、動力性能面で不利な点がありました。ライバルメーカーが250ccクラス専用フレームモデルを投入したことで、HAWKシリーズの250ccモデルも次第に販売低迷に陥っていきました。

まとめ

HAWKシリーズは、独自のスタイルと高い性能で多くのライダーを魅了しましたが、時代の変化やライバル車との競争に敗れ、1982年に生産中止となりました。しかし、その個性的なデザインと高い完成度は、現在でも多くのファンに支持されており、ホンダの歴史における重要なモデルの一つとして記憶されています。

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