ホンダマチック

ホンダマチックについて

ホンダマチック（Hondamatic）は、本田技研工業が独自に開発した自動変速機の名称であり、1968年に初めて自動車に搭載されました。これにより、ホンダは自社の技術を活かした自動変速機を市場に提供し、以降様々なモデルに採用されるようになりました。

概要

ホンダマチックの最大の特徴は、手動変速機が用いる2軸または3軸の平行軸歯車を採用している点です。この仕組みにより、シンクロメッシュ機構を用いる代わりに油圧湿式多板クラッチを利用して変速を実現しました。平行軸の構造は、2014年に前輪駆動車向けの9段ATがZF製の遊星歯車式に替わるまで、ホンダの歴代の自動変速機に受け継がれています。また、MT車のクラッチに相当する機能はトルクコンバータが担っています。

ホンダマチックの開発の背景には、1960年代にボルグワーナーに自動変速機の開発を依頼した際、適合する技術が見つからなかったことがあります。そのため、ホンダは特許に抵触しない方式での開発を開始し、自社での開発を決断しました。最初の搭載例は、1968年4月にN360で実施されました。これにより、ホンダは独自の技術を持つ自動変速機を市場に送り出すことに成功しました。

1976年に初代アコードが発売された際、ホンダマチック車の販売比率は25.2%と、高回転エンジンを使う自動車が多かった当時としては驚異的な数字でした。その後この比率は増加し、1979年には49.8%に達しました。これにより、アコードを購入する多くの顧客がホンダマチックを選んだことがわかります。

機能と展開

ホンダマチックにはフルオート式とセミオート式が存在し、1970年代にはその操作性が強調されていました。初代シビックに搭載された際、ホンダはこの2速セミオート式を「無段変速」と称し、顧客の期待を高めました。しかし、ホンダマチックは必ずしもセミオート式だけにとどまらず、独自の機構を持つ自動変速機でした。そのため、現在でも「ホンダマチック＝セミオート式」という認識が強いですが、それは正確ではありません。

オートバイへの展開もなされ、特に北米市場においては人気がありました。ホンダマチックを搭載したCB750AエアラやCB400Tホークが販売されましたが、日本国内では低速型エンジン特性が受け入れられず、不人気に終わったモデルもあります。しかし、北米ではクルーザー文化との相性が良く、一定の支持を得ました。

1980年代に入ると、フルオートマチック車両への需要が高まる中、ホンダは1982年にアコードやビガーに4速フルオートを導入しました。これにより、セミオート式からフルオート式への移行が進みました。

後継技術

1995年には、ホンダマチックの後継として初のCVTである「ホンダマルチマチック」が登場し、その後も小型車や軽自動車に幅広く展開されました。さらに、オートバイ向けには2008年に「ヒューマン・フレンドリー・トランスミッション（HFT）」が搭載されました。これはエアラ以来のセミAT方式であり、当初は注目されていたものの、販売台数は期待に応えられなかったため、広がりを見せることはありませんでした。

最近では、ホンダはデュアルクラッチトランスミッション（DCT）に移行し、オートバイの主力トランスミッションとしての地位を確立しています。この動きは、ホンダが最新技術を取り入れつつ進化を続けていることを示しています。ホンダマチックの名称は、徐々に「オートマチック」という一般的な表現に取って代わられていますが、その歴史と技術の進化は、ホンダにおける重要な足跡となっています。

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