ホンダ・CB1000スーパーフォア

ホンダ CB1000スーパーフォア：1990年代を代表する名車

ホンダが1992年から1998年にかけて製造・販売したCB1000スーパーフォアは、同社のCBシリーズにおける1000ccクラスのフラッグシップモデルとして、多くのライダーを魅了しました。本稿では、その開発背景、車両の特徴、歴史を詳細に解説します。

開発の背景：高まるビッグバイク人気と革新的なアプローチ

1980年代後半から1990年代初頭にかけて、日本のオートバイ市場では750ccを超えるビッグバイクの人気が急上昇しました。市場の成熟とステータス性の高まりが、この傾向を後押ししたと言えるでしょう。そうした背景の中、ホンダはCBシリーズの次世代フラッグシップモデルの開発に着手します。

開発には、従来のバイク作りの枠にとらわれない、革新的なアプローチが採用されました。社内デザイナーが独断で作成したクレイモデルが開発のきっかけとなり、CBシリーズへの熱い思いを持った開発スタッフが、理想のバイク像を追求する「PROJECT BIG-1」コンセプトに基づいて開発が進められました。CB1000スーパーフォアは、このプロジェクトから生まれた、まさに理想のバイクと言えるでしょう。同時に、CB400スーパーフォアも1992年4月に発売されています。

車両解説：軽快な走りと洗練されたデザイン

CB1000スーパーフォアは、23Lの大型燃料タンクと幅広ハンドルを備え、丸型断面鋼管のダブルクレードル形式フレームを採用した堂々たる車体ながら、スイングアームなどにアルミニウム素材を使用することで軽量化を実現。そのため、実際に走行すると、その軽快さに驚くライダーが多いと言われています。

エンジンは、CBR1000Fに搭載されていた998ccの水冷4ストロークDOHC4気筒エンジンをベースに、日常使用における中低回転域での扱いやすさを重視したセッティングが施されています。最高出力は93ps/8,500rpm、最大トルクは8.6kgf・m/6,000rpmです。

サスペンションは、フロントに43mm径インナーチューブのテレスコピック式、リアにリザーバータンク付きダンパーを採用。18インチの中空3本スポーク式アルミホイールと、前輪120/70-R18、後輪170/60-R18のタイヤを装着し、高い走行性能を実現しています。

特筆すべきは、白と赤のツートンカラーの塗装です。キャンディレッドとパールホワイトを組み合わせたこの塗装は、非常に手間のかかる工程を経て仕上げられています。まず全体をキャンディレッドで塗装し、その後、パールホワイトを塗装する部分を残して一旦剥離、パールホワイトで塗装し、最後にクリア塗装を行うという複雑な工程です。この工程により、キャンディレッド部分の方が塗装面が低くなるという独特の仕上がりとなっています。この塗装方法は、後継モデルのCB1300スーパーフォアではシート貼り付けに変更され、コスト削減が図られました。

歴史：モデルチェンジと輸出仕様

CB1000スーパーフォアは、1992年11月24日に発売されました。1993年モデルでは、白×赤と黒×銀のツートンカラーが採用されました。

1994年にはマイナーチェンジが行われ、ビキニカウルを装着した「CB1000スーパーフォアT2」が追加されました。このモデルでは、リヤスプロケットの変更によるホイールベースの短縮、ハザードランプの搭載、アジャスタブルタイプのクラッチレバー、フルアジャスタブル式リヤサスペンションなど、様々な改良が加えられています。

1996年には、単色カラーのスパークリングシルバーメタリックが追加され、前後ブレーキキャリパーとリヤサスペンションのリザーバータンクをゴールド塗装にすることで、従来モデルと差別化を図られました。

ヨーロッパと北米にも輸出されましたが、日本仕様とはいくつかの違いがあります。例えば、ドライブチェーンのサイズ、キャブレターのスロットルポジションセンサーの有無、車名、カラーリング、標準装備、メーター、フェンダー、リフレクターなどです。海外輸出仕様の最高出力は98psですが、これは測定方法の違いと、当時の日本の出力自主規制によるものです。

CB1000スーパーフォアは、1998年3月にCB1300スーパーフォアにモデルチェンジされ、生産を終了しました。しかし、その洗練されたデザインと高い走行性能は、今もなお多くのライダーに記憶されています。1990年代のホンダを代表する名車の1台と言えるでしょう。

もう一度検索