ホンダ・CBR600RR

ホンダCBR600RR：スーパースポーツの系譜と進化

ホンダCBR600RRは、2003年にデビューしたスーパースポーツバイクです。その開発背景には、1999年にFIMが公認したスーパースポーツ世界選手権の存在が大きく関わっています。各メーカーがレース参戦を視野に入れた、レーサーレプリカとも呼べる高性能モデルを投入する中、ホンダも従来のツアラーモデルCBR600F4iの後継として、サーキット走行に特化したCBR600RRを開発しました。

PC37型 (2003年-2006年)

2002年、ホンダ・ヨーロッパ・モーターサイクルは、新型CBR600RR（PC37型）を発表。MotoGPマシンRC211Vで開発された技術を投入し、高剛性アルミフレームやユニット・プロリンク・リアサスペンションなど、高い旋回性能を実現しました。エンジンはCBR600F4iのものをベースにコンパクト化を図り、軽量化と高出力化を両立しました。

2004年には、フレームの軽量化、倒立フロントフォークの採用、ラジアルマウントブレーキキャリパー化など、運動性能とハンドリングの安定性を向上させた改良モデルが発表されました。PC37型は、スーパースポーツ世界選手権において2003年から2006年まで、ライダーとマニュファクチャラー両部門でチャンピオンを獲得するなど、その実力を証明しました。また、アメリカやヨーロッパ各国でも販売され、多くのライダーに支持されました。

一方で、PC37型は複数のリコールが実施されました。主な原因は後輪ブレーキシステムのリンケージの腐食で、ブレーキ操作不能に繋がる可能性がありました。このリコールは、北米、欧州、オーストラリア、カナダ、日本など、世界規模で行われました。

日本市場では、最高出力が自主規制により69psに抑えられましたが、レースベース車も同時に発売。鈴鹿8耐や全日本選手権などで活躍し、そのポテンシャルの高さを示しました。

PC40型 (2007年-2023年)

2006年、インターモトで発表されたPC40型は、PC37型を全面改良したモデルです。エンジンはさらにコンパクト化され、軽量アルミフレームの採用により、車体全体で約8kgの軽量化を実現。ホイールベースの短縮により、より俊敏なハンドリングを実現しました。

2008年には電子制御式コンバインドABSを搭載。2012年にはカウルデザインを変更するなど、改良が続けられました。しかし、EURO4排出ガス規制に対応できなかったため、2016年末までに欧州市場からの撤退を余儀なくされました。

2020年、EURO4対応の2021年型が発表されました。レースでの勝利を目指し、カムシャフトやクランクシャフトの材質変更、吸排気効率の向上などにより、最高出力は89kWにまで向上。さらに、スロットルバイワイヤシステムやライディングモードの採用など、電子制御技術も進化しました。空力性能にもこだわり、ウイングレットを採用し、高速走行時の安定性を高めました。しかし、EURO5未対応のため欧州市場では販売されず、日本、オーストラリア、東南アジアなどで販売されました。

2023年にはEURO5+適合を果たし、6年ぶりに欧州市場への復活が発表されました。

PC40型も、スーパースポーツ世界選手権やアジアロードレース選手権などで活躍しましたが、2014年を最後に世界選手権でのタイトル獲得はありませんでした。リコールも発生しており、スターターリレー、ヘッドライトリレー、燃料ポンプなど、いくつかの部品に不具合が報告されています。

日本市場では、最高出力は自主規制により制限されましたが、2007年、2009年、2013年と、性能、装備の向上したモデルが発売され、2021年型ではEURO5対応により再び販売が開始されました。レースベース車も継続して販売され、アマチュアレースシーンにおいて高い人気を誇っています。

まとめ

CBR600RRは、常に進化を続けながら、スーパースポーツバイクとしての高い性能と魅力を維持してきました。MotoGP技術のフィードバック、レースでの成功、そして世界規模での販売実績は、その高い信頼性を示しています。しかし、リコール事例からもわかるように、常に改良と品質管理が求められるモデルでもあります。今後の更なる進化に期待しましょう。

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