ホンダ・CR

ホンダCRシリーズ：モトクロス黄金期の証人たち

ホンダがかつて製造・販売していたCRシリーズは、モトクロス競技専用車として長きに渡り愛され続けた名車群です。50ccから500ccまで、様々な排気量のモデルがラインナップされ、世界中のモトクロスシーンを彩りました。本稿では、CRシリーズの歴史と、代表的なモデルについて詳しく解説します。

500ccクラス：CR500Rと、その系譜

CR500Rは、1983年に登場した500ccクラスの雄。世界選手権やAMAモトクロスで活躍する強力なマシンでしたが、その取り扱いの難しさから、販売台数は伸び悩みました。そのため、コスト削減のため、250ccモデルであるCR250Rの部品を多く流用しています。

1985年からは水冷エンジンを採用。基本設計はCR250Rをベースに、ピストンストロークを長くすることで排気量を増大させています。その後もCR250Rと歩調を合わせた改良を繰り返し、毎年モデルチェンジが実施されました。しかし、1980年代半ば以降は250ccマシンの性能向上により、500ccクラスの優位性が薄れ、メーカーの参戦も縮小。それに伴い、CR500Rの改良も控えめなものとなりました。1993年にはFIMが4ストローク650cc以下の排気量を認めたことや、AMAモトクロスで500ccクラスが廃止されたことも、CR500Rの終焉を早めました。

1989年以降はCR250Rからの設計変更はほとんどなくなり、1991年以降はフロントフォークとブレーキのみの変更に留まり、1995年以降はグラフィック変更のみとなりました。2001年に生産終了となり、日本国内での正規販売はありませんでした。

CR500Rの前身には、空冷エンジンのCR480R（1981-1982年）とCR450R Elsinore（1980年）があります。これらもCR250Rの部品を多く流用していましたが、空冷エンジンであるため、冷却水関連部品やラジエターシュラウドがなく、燃料タンクの形状もCR250Rとは異なっていました。

250ccクラス：CR250Rとその系譜

CR250Rは、1977年にCR250Mの後継として登場。CR250Mは、ホンダ初の量産2ストロークエンジン搭載車として1972年に発売され、当時としては驚異的な33馬力を誇りました。CR250Rは、毎年モデルチェンジを重ね、進化を続けました。しかし、環境規制の強化により、2004年に4ストロークエンジンのCRF450Rに後継の座を譲り、新規開発は終了しました。日本では新車販売も終了しましたが、海外では一部地域で継続販売されていました。

125ccクラス：CR125R

CR125Rは、1978年に登場。CR250Rと同様に、毎年モデルチェンジが行われましたが、環境規制の強化を受け、2004年に4ストロークエンジンのCRF250Rに後継の座を譲りました。日本での新車販売は終了しましたが、海外では継続販売されている地域もありました。ロードレース用マシンであるRS125R（NF4まで）のクランクケースは、CR125Rから派生しています。

85cc/80ccクラス：CR85R/R2/RII、CR80R/R2/RII、CR60R、CR50R

子供向けのモトクロス競技用車として、CR85R/R2/RII、CR80R/R2/RII、CR60R、CR50Rがラインナップされていました。これらのモデルは、毎年のグラフィック変更や、数年に一度のモデルチェンジが行われ、初心者からステップアップしていくための選択肢として存在していました。CR85RはCR80Rをベースに排気量を拡大したモデルで、現在も販売が継続されていますが、4ストロークエンジンのCRF150Rに後継の座を譲る可能性も示唆されています。CR60RとCR50Rは、本格的な競技車両というよりは、入門向けのモデルでした。

CRシリーズの遺産

CRシリーズは、ホンダの技術力とモトクロスへの情熱を凝縮したモデル群でした。環境規制の強化や、4ストロークエンジンの台頭により、その歴史に幕を閉じましたが、数々の名車を生み出したCRシリーズは、モトクロス史に大きな足跡を残しました。これらのモデルは、多くのライダーにとって憧れの存在であり、現在でも多くのファンに愛されています。多くのライダーの挑戦と進化を支え、輝かしい歴史を刻んだCRシリーズの功績は、これからも語り継がれていくでしょう。

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