ホンダ・CUV ES

ホンダ CUV ES：先駆的な電動スクーター

ホンダが1994年に発売した電動スクーター、CUV ESは、その時代の技術と環境への意識を凝縮した、非常に稀少なモデルです。Clean Urban Vehicle Electric Scooterの頭文字をとった車名からも、そのコンセプトが読み取れます。

開発と販売

CUV ESは、1991年の低公害車フェアや1993年の東京モーターショーでプロトタイプが公開され、注目を集めました。しかし、市販に際しては、官公庁や地方自治体へのリース販売のみという、限定的な販売形態がとられました。メーカー希望小売価格は85万円（3年間リース）で、販売台数は200台に限定されていました。この限定的な販売戦略は、当時の電動スクーター市場の成熟度や需要を反映していると言えるでしょう。

技術と性能

CUV ESは、定格出力580Wのモーターを搭載し、原動機付自転車に分類されます。駆動用バッテリーには、ニッケルカドミウム蓄電池（86.4V 20Ah）を採用し、フロア・ステップ下部に搭載。交流100ボルト専用の充電器が車載されており、充電環境も考慮されていました。車体には、フルフェイスヘルメットも収納できるセンタートランク（メットイン）を装備するなど、利便性も重視した設計となっています。

デザインと特徴

CUV ESのデザインは、ホンダの他のスクーターモデル、特に2代目スーパーディオと共通点が見られる部分があります。ノーズやステアリング、シートカウル周りのデザインに、その影響が見て取れるでしょう。ホンダの他の電動スクーターであるベンリイやジャイロシリーズとは異なり、CUV ESはよりスタイリッシュで、現代的なデザインを取り入れていると言えるかもしれません。

市販電動2輪車の先駆け

CUV ESは、ホンダ初の市販電動2輪車（リース販売限定）という歴史的意義を持っています。しかし、当時の市場の状況や需要の低さから、生産は終了しました。しかし、そのコンセプトは、2011年に発表されたEV-neoへと受け継がれています。CUV ESは、現代の電動モビリティの礎を築いた、重要なモデルと言えるでしょう。

関係各社

CUV ESの開発には、バッテリー製造元として三洋電機（当時）が協力しました。これは、電動スクーターの開発には、モーターやバッテリーといった複数の技術分野の連携が不可欠であることを示しています。

まとめ

ホンダCUV ESは、限定的な販売台数、リース販売という独自の販売方法、そして現代の電動スクーターへと続く技術革新の道を示した、歴史的な一台です。その希少性と先進性は、日本の電動モビリティの歴史を考える上で、重要な位置を占めていると言えるでしょう。 現代の電動スクーターの隆盛を予見するかのようなCUV ESは、まさに先駆者としての存在感を放っています。 市場のニーズや技術的な課題を克服しながら、電動モビリティ社会の実現に向けて歩みを進めたホンダの挑戦の軌跡を垣間見ることができる一台と言えるでしょう。

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