ホンダ・EZ-9

ホンダ EZ-9/EZ-SNOW：手軽に楽しめるオフロード・スノーモービル

1990年代初頭、ホンダはオフロード走行を楽しむための新しい乗り物として、EZ-9を世に送り出しました。EZ-9は、その斬新なデザインと操作性の良さから、多くのユーザーを魅了したモデルです。本記事では、EZ-9とその派生モデルであるEZ-SNOWについて、詳細な解説をしていきます。

EZ-9：気軽にオフロード体験

EZ-9は、1989年の東京モーターショーで参考出品されたコンセプトモデルEZ-90をベースに開発されました。その最大の特徴は、一体式フルカバードデザインを採用している点です。エンジン、燃料タンク、ドライブユニットなど、主要なメカニズムを覆うカバーで保護することで、メンテナンスの容易さと高いデザイン性を両立しています。

車体はコンパクトで軽量に設計されており、全長1680mm、全幅755mm、全高990mm、乾燥重量82kgと、取り回しの良さが魅力です。初心者でも扱いやすいように、操作系はシンプルに設計され、複雑な操作を必要としません。

搭載されるエンジンは、89.7ccの2ストローク単気筒エンジンです。最高出力は7.8psと控えめですが、扱いやすい出力特性で、オフロード走行において十分なパワーを発揮します。トランスミッションはVベルト式無段変速機を採用し、スムーズな加速を実現しています。また、後輪からの逆駆動力をエンジンに伝えるクラッチ機構を備えることで、下り坂でのエンジンブレーキ効果も得られるようになっています。

サスペンションは、フロントにテレスコピック式、リアにスイングアーム式を採用。前後輪共に機械式リーディングトレーリングブレーキを装備し、左手レバーと右足ペダルの両方でブレーキ操作が可能です。タイヤは、オフロード走行に適した専用チューブレスバイアスタイヤが装着されています。

EZ-9はナンバープレートを取得できないため、公道での走行はできません。しかし、私有地や林道などでの走行を楽しむには最適なマシンです。その手軽さと扱いやすさから、アウトドアレジャーの新たな選択肢として人気を博しました。

EZ-SNOW：雪上を駆け抜ける

1991年には、EZ-9をベースにしたスノーモービル、EZ-SNOWが登場しました。EZ-9のメカニズムを踏襲しつつ、フロントフォークをスキーユニット、後輪駆動部をトラックベルトユニットに変更することで、雪上走行を可能にしています。

車体サイズは、EZ-9よりも大型化され、全長2155mm、全幅760mm、全高925mm、乾燥重量98kgとなっています。エンジン等のスペックはEZ-9と変わりませんが、雪上走行に合わせたチューニングが施されています。EZ-SNOWも、EZ-9と同様にナンバープレートの取得は不要です。

販売と歴史

EZ-9は1990年9月、EZ-SNOWは1991年12月に発売されました。販売台数はEZ-9が年間500台、EZ-SNOWが年間120台という限定的な販売でしたが、その独特のコンセプトと高い操作性から、多くのファンを獲得しました。1993年には、EZ-9のマイナーチェンジモデルが限定生産されました。

まとめ

EZ-9とEZ-SNOWは、ホンダが提案した革新的なレクリエーションビークルでした。その手軽さと楽しさは、多くのユーザーを魅了し、オフロードやスノーモービルという分野に新たな風を吹き込みました。これらのモデルは、現在では生産が終了していますが、その存在は、ホンダの技術力とチャレンジ精神を示す貴重な遺産として、今も語り継がれています。 現在では入手困難な希少なモデルですが、中古市場で探してみるのも良いかもしれません。ただし、購入時には整備状況などをよく確認する必要があります。

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